
第1刷:1990年7月31日 第42刷:2017年12月5日
単行本発行:1972年 実業之日本社
今月、帰省した際、竹原のTSUTAYAで購入した文庫本。
戦記物においても優れた作品を残した水木しげるの漫画の中でも極めて評価が高く、このちくま文庫版が15万部のベストセラーになっていたことは後で知った。
ヒトラーはこれまで数多くの評伝、研究書、ドキュメンタリー、さらにはフィクションの小説、映画、ドラマ、コメディーの題材になっており、日本の漫画にも手塚治虫の『アドルフに告ぐ』(1985年)という傑作がある。
しかし、妖怪漫画家でもある水木独自の視点とタッチによって描かれた本作は、そうした過去の作品群とはまた異なった独特の内容で読者を惹きつけてやまない。
最大の特長は、ホロコーストや愛人エファ・ブラウンについてはほとんど触れず、画家や建築家を目指して挫折したヒトラーの青春期を詳しく描いていることだろう。
食うや食わずの生活を送っていたヒトラーが、たった6人のドイツ労働者党に入党し、演説の才能を発揮してリーダーにのし上がっていく様が、じっくりと丁寧に、水木ならではのユーモアを交えて描かれる。
ヒトラーがナチスの総統となった後、腹違いの姉の娘、姪のゲリに惚れ込み、束縛したあげくに自殺へ追い込んでしまったエピソードは、本書を読んで初めて知った。
ゲリを亡くしたショックによる狂乱状態は、多少誇張されているのかもしれないが、ひょっとしたらホロコーストを断行した動機の一部になっているのかもしれない、と思わせる。
独裁者は誰も最初から独裁者だったわけではないのだ、というしごく当たり前の真理が改めて胸に染みる作品。
ヒトラーが自決する前の表情をクローズアップした一コマが強烈に印象に残る。
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