2011年のヒット作『マネーボール』の劇場公開に合わせ、WOWOWが企画、放送した野球映画特集の1本。
マドンナが主題歌を歌い、助演もしているというから、劇場公開当時はもっとエンターテインメント色の濃い作品かと思っていたのだが、意外にしっかりつくられた実話モノである。
題材となった全米女子プロ野球リーグ(AAGPBL)を初めて紹介した作品としても極めて興味深い。
AAGPBLは第2次大戦下の1943年に発足。男の選手たちが徴兵されて中止に追い込まれたメジャーリーグの代替リーグとして開催された。
アメリカといえどもまだ女性差別の激しかった時代で、この女子リーグもプロスポーツのゲームというよりはショーの興行として捉えられていたようだ。
しかし、厳しいテストを勝ち抜いて契約にこぎつけた女たちはみんな真剣そのもの。
マドンナ以外、色気よりもタフネスを感じさせる女優をそろえていることもリアリティーを高めている。
そのマドンナがまたいい味を出しているのですよ。
場末のショーダンサー上がりという設定で、テストを受けにグラウンドにやってくるや、いきなりくわえ煙草でキャッチボールを始める姿には噴きました。
しかも勝負強い打撃が売り物で、初球からガンガン打ちにいくタイプ。
まるで水島慎司の傑作『野球狂の詩』に出てくるヤクザっぽい選手の女子版みたい。
元メジャーのホームラン王、膝を壊して現役を引退したというチームの監督がトム・ハンクスで、作品全体の重しのような役目を果たしている。
最初はアル中で、選手たちの頑張りに引きずられて酒を断つあたりは『がんばれ!ベアーズ』(1976年)でウォルター・マッソーが演じた少年野球チームの監督にそっくり。
最後の主演2人の〝姉妹対決〟はお約束の展開で、結末が読めても胸が熱くなってしまう。
ついつい、「どっちも頑張れ!」と叫びたくなったりして。
しんみりとしたラストの味もいい。
ぼくはやっぱり、『マネーボール』よりこういう映画のほうが好きだなあ。
先に挙げた『がんばれ!ベアーズ』やケビン・コスナーの野球3部作もそうだけれど、アメリカの野球映画はおしなべてよくできてますよね。
それに引き換え、わが国も野球が盛んなのに、なぜか野球映画が少ないんだよなぁ。
オススメ度A。
旧サイト:2011年12月9日(金)付Pick-up記事を再録、修正
オススメ度A。
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