第二次世界大戦中の実話、チェコを占領していたナチス・ドイツ副総督ラインハルト・ハイドリヒ暗殺計画「エンスラポイド作戦」を映画化した作品。
厳しいドキュメンタリー・タッチの中に、チェコ解放戦線の若き兵士たちの瑞々しくも痛々しい青春群像が描かれた1970年代の佳編である。
1941年12月、イギリス空軍に所属していたチェコ亡命軍の若者たち、ヤン・クビシュ(ティモシー・ボトムズ)、ヨゼフ・ギャプチーク(アンドリュー・スティーヴンス)、カレル・チューダ(マーティン・ショー)ら3人がプラハに潜入する。
職業兵士ではないチェコ人の彼らが、抵抗運動を続ける一般市民と接触するくだりにしみじみとした味わいがあって、本作がいわゆる戦争アクションとは趣を異にした作品であることを感じさせる。
主演のボトムズも含めて、公開当時もどちらかと言えば地味な存在だった俳優たちはそろって好演。
一方、ハイドリヒに扮したドイツ人俳優アントン・ディファリングも、冷たさや無慈悲さの中に威厳や気高さを漂わせて、こちらも映画で表現されたナチス・ドイツの軍人像として出色の出来栄えと言っていい。
素人同然の暗殺部隊とあって、客車に乗車中のハイドリヒを狙撃しようとした最初の計画はあえなく失敗。
次に、ハイドリヒが軍用車で移動中のところを襲撃すると、今度は機関銃の弾が不発というアクシデントに見舞われる。
それでもハイドリヒに深手を負わせることに成功し、ヤンたちがふたたびプラハの街に身を隠した矢先、ナチスの激しく執拗な追跡が始まる。
報復として一つの村(史実では二つ)を全滅させたナチスの猛威に恐れをなした若者たちのひとりは、家族の安全を保障することを条件に、ゲシュタポに仲間の情報を売る。
終盤は、亡命軍の若者たちがプラハの聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂に立てこもり、ナチスと凄まじい銃撃戦を展開。
業を煮やしたナチスは、地下室で抵抗を続ける若者たちを水攻めにして追い詰めてゆく。
このクライマックスは抵抗運動を描いた戦争映画でも屈指の名場面だろう。
若者たちを匿い、ヤンの恋人となっていたアンナが教会の前で為す術もなく成り行きを見つめる絶望的な表情も印象深い。
実際に事件が起こったプラハでロケ撮影を行い、アメリカ映画ながら撮影を担当しているフランスの名匠アンリ・ドカエの映像も実に美しい。
監督は007シリーズ『007は二度死ぬ』(1967年)、『007私を愛したスパイ』(1977年)などで有名なルイス・ギルバートだが、彼のキャリアの中では間違いなく本作がベストだろう。
最後に流れる登場人物たちのその後を紹介したテロップも痛切で胸を打つ。
このエンディングには涙を堪えきれなかった。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑
旧サイト:2016年02月22日(月)Pick-up記事を再録、修正