今週水曜、小守スポーツマッサージ療院からの帰途、別の本を買いに紀伊国屋書店に寄ったら目に入り、ついでだからと購入して、翌日読み始めたらたちまちやめられなくなり、結局一日で読み終えてしまった。
何冊も縦積みしてあるから最近出たばかりなのかと思って奥付を見たら、初版発行はもう4年以上前、親本は6年以上前である。
筒井康隆さんは僕が最も多くの作品を読んだ作家である。
中学、高校時代に角川文庫、新潮文庫、講談社文庫、集英社文庫、文春文庫、中公文庫の短編集を読み漁り、各社の文庫本をすべて読み尽くすと、今度は新刊の単行本が出るたびに買ってはのめり込むように読んでいたものだ。
そういう極めて、恐らくは人生で一番個人的な思い入れが強い作家が「自作を語る」インタビュー集なのだから、面白くないわけがない。
角川文庫で読んだ『幻想の未来』、『にぎやかな未来』、『わが良き狼(ウルフ)』、新潮文庫の『男たちのかいた絵』、『俺の血は他人の血』、『七瀬ふたたび』、『時をかける少女』、中公文庫の『東海道戦争』、『アルファルファ作戦』、ハードカバーの『欠陥大百科』、『大いなる助走』、『虚人たち』、『残像に口紅を』などなど、昔耽読した作品群のディテールまできのう読んだかのように詳しく、懐かしく思い出した(すっかり忘れていた作品もありましたが)。
若いころに長編作品を没にされ、自棄になったあまり淀川に原稿用紙の束を投げ捨てたとか、『最高級有機質肥料』を書くときには自分の大便を皿に盛ってナイフで切り、ついに発狂したかと奥さんに思われたとか、かつてエッセイに面白おかしく書いていた内幕はすべて作り話だそうである。
騙されたあ、騙されたあ、と、このくだりでは思わず筒井康隆調で悔しがりました。
自分が野球記者になってからは興味がスポーツに関する小説やノンフィクションに移り、高齢となった筒井さんも断筆宣言をしたりして、以前ほど頻繁に小説の新刊が出なくなったため、こちらも昔のように追いかけて読むのをやめてしまった。
最後に読んだのは2003年に刊行された『ヘル』だが、筒井さんも老境に入ったためか、ドタバタやブラックユーモアが読ませどころだったころの筒井作品とはすっかり作風が変わっていた。
また、当時は僕自身もノンフィクション作品の発表を始めていたことから、筒井作品との文体やスタイルの違いを痛感し、興味を持てなくなったのだ。
自分が本職の物書きになって初めて、筒井さんに憧れるのをやめることができた、と言うと大谷翔平ふうでカッコ良過ぎるかな。
もうひとつの直接的な原因は、世の中が禁煙社会となり、僕自身もたばこをやめ、他人の副流煙が癇に障るようになったころ、筒井さんがエッセイでしょっちゅう嫌煙家を攻撃するようになったことである。
とくに〈噂の眞相〉の連載『笑犬樓よりの眺望』におけるたばこ擁護論、嫌煙運動批判はヒステリックで錯乱気味で、字面を追っていて不愉快極まりなく、到底まともに読めたものではなかった、と言いながら一字一句しっかり読んだんですが。
その筒井さんも最近、夫人と一緒に老人ホームに入所し、当然のように禁煙生活を送っているという。
個人的にはご存命のうちにぜひ伺っておきたい話もあるけれど、もはやインタビューすることは無理でしょうね(ちなみに、筒井さんと同時代の作家、星新一さん、都筑道夫さん、阿刀田高さんにはご自宅の書斎でインタビューしたことがあります)。
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