Pick-up前項『アイ・アム まきもと』(2022年)の元ネタになった作品。
リメイク版が随所に笑わせどころを盛り込んだコメディーだったのに対して、ロンドンを舞台としたこちらのオリジナル版はしんみりとさせるクラシカルな人間ドラマである。
主人公ジョン・メイ(エディ・マーサン)はケニントン地区で22年間民生係を務めている44歳の独り者。
長年孤独死した住民の身元調査を担当していたところ、教会で葬式まで挙げているために経費がかかり過ぎるとして、ある日突然、上司に解雇を通達される。
役所の退職期限が迫る中、メイの自宅アパートの向かいのアパートで、死後40日以上経ったビリー・ストークという男の死体が発見された。
仕事の最後に彼の葬儀を行いたいと決心したメイは、欠勤を願い出てストークの遺族探しに奔走する。
メイはリメイク版で阿部サダヲが演じた牧本とは違い、とぼけたところもなければ素っ頓狂なことも言わず、ほとんど表情すら変えないで孤独死した死者を弔うことに邁進する。
ちなみに、阿部サダヲは仕事中でも終始ノーネクタイだったが、こちらは逆に自宅で朝食を摂るときから一日中ネクタイを締めたまま。
それほど謹厳実直なメイが、ストークの娘ケリー(ジョアンヌ・フロガット)と心を通わせるようになると、ネクタイを外して彼女に会い、控えめに微笑む表情が実に印象深い。
原作を書き、監督、脚本、製作を手がけたウベルト・パゾリーニは、シェフィールドを舞台にした人情コメディ『フル・モンティ』(1997年)をプロデュースした人物で、今回も心温まる一編に仕上げている。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑