岩明均が1990~95年、月刊アフタヌーンに連載していた原作漫画はオンタイムで読んでいる。
アットホームな温かさを感じさせる画風とは裏腹に残忍な描写が頻出し、主人公・新一の母親が寄生獣の犠牲になるくだりでつらくなり、当時は完読できていない。
しかし、その面白さ、完成度の高さから大勢のマニアックなファンが付き、コミックスが完全版、新装版、文庫版など様々にスタイルを変えて再販、2014年には日本テレビでアニメ化された。
また、寄生された人間の頭や身体が割れ、正体を現す描写のアイデアは、キャメロンとシュワルツェネッガーの『ターミネーター2』(1991年)で模倣されたと言われる。
それだけ原作がカルト化していたからか、初の実写映画化作品となった本作は、原作のファンから猛反発を受けたらしい。
が、監督、脚本、VFXを手がけたのは『ゴジラ-1.0』(2023年)の山崎貴(脚本は古沢良太と共同)で、彼も原作の大ファンだったというだけに、岩明漫画持つエッセンスを大変忠実にスクリーンに移し替えることに成功している、とぼくは思う。
とりわけ、阿部サダヲが声を務めるミギーのキャラクターが非常にいい味を出しており、寄生獣と化した女教師・田宮良子役の深津絵里も母性と怪物性の両方を巧みに表現している。
主人公の新一を演じる染谷将太をはじめ、新一の母親・余貴美子、新一の彼女・里美の橋本愛、老刑事の國村隼など、青春ドラマのパートを担う役者たちもそろって好演(ぼくの世代は、深津に無惨な殺され方をする田島令子にときめきとノスタルジアを感じちゃいますが)。
前編の『寄生獣』、後編の『完結編』を比べると、完成度と面白さでは前編のほうが上だろう。
里美が初めて寄生獣に遭遇するシーンには思わず息を呑み、新一が〝元母親〟の寄生獣と対決する場面の哀感にも胸打たれるものがある。
しかし、後編の完結編ではSATが東福山市役所に突撃するシークエンスで細部が端折られ過ぎており、5人で1人の最強の寄生獣(石ノ森章太郎の『人造人間キカイダー』に出てくるガッタイダーみたい)浅野忠信と新一の対決もいまひとつ盛り上がらない。
最後の最後に変質者・新井浩文がからんでくるエンディングももったいぶっているような印象を残す。
とはいえ、前後編とも2時間弱でしっかり楽しめるようまとめられており、うるさいことは言いっこなしとしましょう。
CGのミギーをはじめ、山崎と白組によるVFXのクオリティが大変高いことも付記しておく。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑
旧サイト:2016年09月01日(月)Pick-up記事を再録、修正