『アメリカ野球 ちょっといい話』ロジャー・エンジェル😁😭😢😳🤔🤓☺️

Five Seasons
発行:集英社 翻訳:村上博基 第1刷:1981年5月25日 定価1400円/古書のみ
原書発行:1977年

著者は1970年代から90年代にかけて活躍したアメリカのライター兼編集者。
スポーツ全般からパロディ企画など幅い広いジャンルで健筆をふるい、野球で一時代を築いたことで知られる。

本書は70年代に〈ニューヨーカー〉誌で連載していた小文をまとめたもの。
原書は16章立てだが、この邦訳版は4章がカットされた12章立て。

翻訳者も野球記事に造詣の深い人物らしく、ときに軽快に、ときに重厚感を漂わせる手練れの書き手によるコラムを楽しむことができる。
とりわけ面白いのが、野球のボールがゲームにおいて担う役割の特殊性について、球技全般と比較して論じた第1章「ボール考現学」。

いまで言うイップスを発症して現役生活を断念したピッツバーグ・パイレーツのエース、スティーヴ・ブラスとの心の交流を綴った第9章「終の別れ」も心に沁みる。
当時はイップスという言葉がなかったのか、あるいはいまほど一般的ではなかったのか、イップスという言葉自体を使わずにエース投手の苦悩を、適度な距離を置いて綴った文章が素晴らしい。

カリフォルニア・エンジェルスのベテラン・スカウト、レイ・スカボロとともに高校や大学の野球を見て回る第11章「スカウト稼業」も、自分の取材経験と照らし合わせて、興味深く読んだ。
野球を語る文章とは、その中でも読者の間で語り継がれる文章とはどういうものか、ひとつのお手本がここにある、と思う。

😁😭😢😳🤔🤓☺️

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旧サイト:2014年10月31日(金)Pick-up記事を再録、修正

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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