著者は1970年代から90年代にかけて活躍したアメリカのライター兼編集者。
スポーツ全般からパロディ企画など幅い広いジャンルで健筆をふるい、野球で一時代を築いたことで知られる。
本書は70年代に〈ニューヨーカー〉誌で連載していた小文をまとめたもの。
原書は16章立てだが、この邦訳版は4章がカットされた12章立て。
翻訳者も野球記事に造詣の深い人物らしく、ときに軽快に、ときに重厚感を漂わせる手練れの書き手によるコラムを楽しむことができる。
とりわけ面白いのが、野球のボールがゲームにおいて担う役割の特殊性について、球技全般と比較して論じた第1章「ボール考現学」。
いまで言うイップスを発症して現役生活を断念したピッツバーグ・パイレーツのエース、スティーヴ・ブラスとの心の交流を綴った第9章「終の別れ」も心に沁みる。
当時はイップスという言葉がなかったのか、あるいはいまほど一般的ではなかったのか、イップスという言葉自体を使わずにエース投手の苦悩を、適度な距離を置いて綴った文章が素晴らしい。
カリフォルニア・エンジェルスのベテラン・スカウト、レイ・スカボロとともに高校や大学の野球を見て回る第11章「スカウト稼業」も、自分の取材経験と照らし合わせて、興味深く読んだ。
野球を語る文章とは、その中でも読者の間で語り継がれる文章とはどういうものか、ひとつのお手本がここにある、と思う。
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旧サイト:2014年10月31日(金)Pick-up記事を再録、修正