『ヤング・ゼネレーション』(セルDVD)🤗

Breaking Away
101分 1979年 アメリカ=20世紀FOX
日本公開:1980年
DVD発売元:20世紀FOX ホーム エンターテイメント ジャパン DVD製作:2010年 定価:3600円=税別

1979年度アカデミー作品賞、監督賞、音楽賞、助演女優賞ノミネート、脚本賞受賞作品。
同年、ゴールデングローブ賞と全米映画批評家協会賞の作品賞も受賞している。

また、2006年にアメリカ映画協会(MPAA)が選出した(1946年以降)100年間のベスト100の1本にも選出された。
現代ではいささか古びて見える印象は否めないものの、自転車ロードレースを題材とした青春映画としては本作が最高傑作かもしれない。

舞台はインディアナ州の片田舎ブルーミントン。
主人公デイブ(デニス・クリストファー)は今時の日本にもよくいそうなロードレースファンの大学浪人で、勉強もしないで自転車に血道を上げている。

愛車のフレームはマージ、かぶっているキャップはカンパニョーロ、憧れのレーサーはジモンディ。
ふだんから二言目には「イタリア人になりたい」と口走り、両親(ポール・ドゥーリイとバーバラ・バリー)にもイタリア語で話しかけるオタクぶりが面白い。

そんなデイブの悪ガキ仲間がマイク(デニス・クエイド)、ムーチャー(ジャッキー・アール・ヘイリー)、シリル(ダニエル・スターン)。
彼ら4人組は事あるごとに地元の大学に通う学生たちとケンカや小競り合いを繰り返している。

このくだりでキーワードになるのが、学生たちが4人組に浴びせる「カッター」という蔑称。
これはブルーミントンの歴史と土地柄を知らないとわかりにくいかもしれない。

ブルーミントンはもともと採石で栄えた町で、デイブたち4人組も石切職人の家に生まれ育っている。
中流(アッパーミドル)の家庭で何不自由なく暮らしている学生たちは、自分たちよりも貧しく、教育にも乏しい石切(ストーン・カッティング)職人の子弟を揶揄し、「カッター」と呼んで差別しているわけだ。

デイブの父親はそんな一介の石切職人から中古車ディーラーとして独立した苦労人。
ちゃんと勉強して大学に入るよう息子を説得しているのだが、ロードレースに夢中になっているデイブのほうは一向に耳を貸さない。

このあたり、ちょうど本作の劇場公開時に高校、大学浪人生活を送っていたぼくには大変共感できるところが多い。
ぼくの場合、10代のころにハマったのは映画やプロレスで、のちに30代後半になって自転車に入れあげるようになった。

一方、母親は息子に甘く、次第に自分もクリストファーに影響を受けてイタリアかぶれになってゆく。
そんな母親に父親も感化され、イタリア人並みに夫婦生活を再開、とうとう子供をつくってしまうというくだりがほのぼのと笑える。

クライマックス、悪ガキ4人組は仇敵の学生たちと大学主催のエンデューロで雌雄を決することになる。
母親が彼らのためにチームジャージをつくり、胸に堂々と「カッターズ」とプリントして、当初は「おれが行くと負けるから」と言っていた父親も自分の店から応援に駆けつけるくだりは泣ける、本当に泣ける。

監督はエンターテインメント、文芸作品の双方で印象的な佳品を撮っている往年の鬼才ピーター・イエーツ。
オリジナル脚本を書いたスティーブ・テシックは本作でオスカーをはじめ、全米、及びニューヨークの映画批評家協会賞を受賞、のちに『ガープの世界』(1982年)の映画化脚本も手がけた才人である。

人生の深淵に迫る主題を内包していることを示唆しながら、素直に拍手を送りたくなる青春スポーツドラマの傑作。
自転車ロードレースに興味のある人はもちろん、ない人もぜひご覧ください!

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

旧サイト:2014年10月8日(水)付Pick-up記事を再録、修正

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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