主人公はバリー・ボンズの代理人だったことで知られる辣腕スポーツ・エージェントのJB・バーンスタイン。
彼がメジャーリーグ史上初のインド人選手をスカウトし、自ら書き上げた体験談をディズニーが映画化した作品である。
LAの豪邸に一人暮らし、愛車はポルシェ・カブリオレ、女は夜ごとパーティーで引っ掛けたモデルを取っ替え引っ替え。
そんなリッチでセレブで満ち足りた生活を送っていたJBが、NFLのスター選手に逃げられて生活が一変、たちまち事務所の家賃すら払えなくなってしまい、新たな金づるを見つけなければならなくなる。
このままでは破産だ、俺はこれからどうすればいいんだ。
頭を抱えたJBが打開策のアイデアを考えついたのは、夜、家のカウチでひとりテレビ番組のザッピングをしている最中だった。
リモコンでチャンネルを変えていると、イギリスの素人参加型オーディション番組が映り、そこでまだ無名だったスーザン・ボイルが熱唱している。
何の気なしにチャンネルを変えると、今度はインドのクリケットの試合中継が映る。
何度も両方の番組を眺めているうち、突然、これだ! とJBはひらめく。
クリケットの盛んなインドでプロ野球選手になるためのコンテストを行い、MLBのスーザン・ボイルを発掘しよう!(ただし、このくだりはボイルがオーディション番組でブレークした経緯を知らないとわかりにくいかもしれない)。
以上が2009年夏ごろのこと。
2008年に公開されて大ヒット、アカデミー作品賞を受賞した映画『スラムドッグ$ミリオネア』もヒントになったらしい。
かくて、金の玉子を発掘するため、単身インドに渡ったJBのスカウト・ツアーが始まる。
145キロ以上のスピードでストライクを3球投げられたら10万ドルの賞金を出す、というトライアウトを各地で開催、優勝者と契約してアメリカへ連れていこうというのだ。
インドでテレビ中継され、現在も当地で継続しているこのイベントが「ミリオンダラー・アーム」である。
審査員としてJBに同行するスカウトがレイ・ポイトヴィントというのが面白い。
ポイトヴィントは1990年代、日本プロ野球界に外国人選手を紹介する窓口になっていた人物で、とりわけ近鉄バファローズとの縁が深かった。
ぼくと同世代以上の同業者なら、お世話になった新聞記者やフリーライターも少なくないはずだ。
映画の大詰めではこのお爺ちゃんが思わぬ〝実力〟を発揮するので、ぜひお見逃しなきように。
演じている往年のコメディアン、アラン・アーキンも実にいい味を出している。
このコンテストで見事に賞金をゲットした若者は、優勝が左投げで槍投げの選手だったリンク・シン、準優勝が右投げでクリケットをやっていたディネシュ・パテル。
しかし、彼らをアメリカに連れていき、LAの生活に馴染ませ、まともに野球にできるようにするまでがまた思わぬ苦労とハプニングの連続だった。
ここから先は書かないほうがいいでしょう。
実在のリンクとディネシュの現状もネットで検索すれば簡単にわかるけど、知らないで観たほうが楽しめますよ。
役者では、バーンスタイン役のジョン・ハムもさりながら、インド人マネージャーのアーシフ・マンドヴィが好演。
実在の名投手コーチ、トム・ハウスに扮したビル・パクストンの渋い脇役ぶりも光る。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑
旧サイト:2014年10月9日(木)付Pick-up記事を再録、修正