『博士と彼女のセオリー』(WOWOW)🤗

The Theory of Everything
124分 2014年 イギリス=ユニヴァーサル・ピクチャーズ
日本公開:2015年 配給:東宝東和

理論的宇宙論で日本でもよく知られている理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士と元妻ジェーンの恋愛と結婚生活を描いた伝記映画である。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかりながら研究を諦めず、驚嘆すべき成果を挙げてゆくホーキングを巧みに演じたエディ・レッドメインが第87回アカデミー主演男優賞を受賞した。

開巻、オックスフォード大学に自転車で通う若き日のホーキングの姿が映し出され、現在の車椅子の姿しか知らないわれわれを驚かせる。
キャンパスでホーキングと知り合い、愛を育むジェーン役のフェリシティ・ジョーンズも好演で、ふたりが舞踏会の晩に花火を見上げるシーンが素晴らしい。

ただし、ALSにかかって別れようと言うホーキングを説き伏せ、自らの意思で結婚まで突き進むジェーンの心理はいまひとつわかりにくい。
ホーキングのいかにも科学者らしい独善的な性格が第三者的な視点で描かれている一方、のちに夫となるジョナサンと不倫の関係を持つジェーンの描き方がキレイ過ぎないか、という憾みも残る。

しかし、これは原作がジェーン自身の回顧録だから仕方のないところかもしれない。
登場人物が全員存命で、誰にとってもある程度、得心のゆく作品にしなければならない、という制約のあった中では、ベストに近い出来栄えではないか、と推察する。

脚本を書いたアンソニー・マッカーテンは本作の着想を得てから何度もジェーンの下に足を運び、3年かけて映画化権の獲得にこぎつけたという。
ホーキング本人からも理解を得ており、終盤に使われる音声データは実際にホーキングが〝話した〟ものを提供してもらったそうだ。

ふたりしてエリザベス女王に謁見し、バッキンガム宮殿の庭で遊びまわる子供たちを見ながら、「私たちが作り上げたものを見て」とジェーンがつぶやくラストはやはり感動的である。
様々に異論はあろうが、これは極めて幸せな着地点を見出したノンフィクションの映画化の成功例だと思いたい。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

旧サイト:2016年03月17日(月)Pick-up記事を再録、修正

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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