1944年6月15日に始まったサイパン戦の最中、崖から飛び降りる日本人女性の映像は、僕と同世代の日本人なら一度は観たことがあるはずだ。
本作はそのサイパン戦を戦った米兵たちが、ラジオ通信兵ラリー・ヘイズの取材に答えて語った海兵隊戦闘記録を発掘したドキュメンタリーである。
これは戦地の兵隊たちの肉声をアメリカ本土でラジオ放送し、米国民に理解を求め、太平洋戦争における戦意高揚のために録音された。
その中で、ある兵士は「われわれはライフルを持つジャップを最後の1人まで皆殺しにしなければならないと確信した」と勇ましく語っている。
ただし、米国民の士気を下げないため、死傷者の具体的な状態については、聞くことも語ることも厳しく禁じられていた。
そうした自主規制・取材制限を科せられていたにもかかわらず、日米双方の兵士の死体が転がったビーチの模様を語るヘイズや米兵のリポートは酸鼻を極める。
米兵が見た日本兵たちは大勢で「バンザイ、バンザイと叫びながら命を投げ出してきた」そうで、「恐ろしい集団だ。思い出すだけでゾッと」したという。
いわゆる「バンザイ突撃」で米兵を殺そうと向かってくる日本兵に、米兵たちも憎悪を募らせ、録音にはジャップという差別用語が頻出する。
一方で、日本兵の恐怖に怯えていた米兵は、日本兵と間違えて日本人の少女を撃ち殺し、良心の呵責に耐えかねて帰国前に自ら命を絶った、という痛ましい出来事も紹介されている。
3日間の戦闘が終わったとき、ヘイズの目の前にある「日本人の子供の死体は毒を盛られた仔犬のように膨らんで」、「馬の死骸、スカンク、ひどい埃を混ぜ合わせた、衣服や魂にまで染み込むような刺激臭」が漂っていたそうだ。
80年経ったいまでも、観ていて辛くなるドキュメンタリーの力作。
この録音をいま、100歳近くになって聴き、「サイパンで何があったかは言いたくない」と声を絞り出す元帰還兵の顔も印象に残った。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑