終戦の日の2日後、土曜の夜に放送されて大反響を呼んだ特攻についてのドキュメンタリー。
ナレーションも務めたNHKエンタープライズのディレクター、大島隆之氏が15年間、約400人以上の特攻隊員の出生地を訪ね、これまで秘匿されていた極秘資料を発掘した労作にして秀作である。
太平洋戦争末期、零戦がアメリカ海軍の戦艦に体当たりしたり、その直前に撃墜されたりした記録映像なら、何度となく戦争映画やドキュメンタリーで紹介されてきた。
ただ、遠くから撮影されたその古い映像を見て、どういう人生を生きてきた市井の若者が、どれほど無念の思いで命を散らしたかと想像するのは難しい。
本作は、その特攻映像に捉えられた若者の顔写真とともに、名前、享年、出生地、家族や新妻の存在まで明らかにして、いかに理不尽な運命を強いられたかを描いていく。
零戦が米戦艦に体当たりする瞬間、彼らは最後にどのような光景を見たのか、何を叫んでいたのかと想像して、胸が塞がるような思いがした。
新たに見つかった資料によれば、当時の航空隊上層部は、全国各地で訓練に励む搭乗員に対し、特攻に志願するかどうかという意思確認を行い、海軍省に提出していた。
個人名の上に積極的な志願を示す「熱望」、それに準ずる「望」の評価が記され、その下には個々人の家族構成も記されている。
しかし、冷徹な海軍省は、トップの成績を残している搭乗員が「熱望」しても、特攻で死なせるのは惜しいと判断し、それ以下の「望」の若者たちを選んで飛ばせた。
ある意味、非情なだけでなく、狡猾で御都合主義の側面もあった特攻を、当時の新聞は「一億特攻」という気狂いじみた大見出しを掲げて煽りに煽っている。
非常に綿密な調査内容はもちろん、それをわかりやすく伝えた映像表現もまことに斬新かつ秀逸。
特攻については、過去の本、映画、ドキュメンタリーなどである程度の知識は持っているつもりだったが、まだまだ何も知らなかったことを痛感させられました。
オススメ度A。
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