毎年、原爆の日が訪れるたびに優れたドキュメンタリーを制作しているNHKが、今年もまた貴重で感動的な作品を放送した。
今回は、被爆地で倒壊を免れた広島赤十字病院で何が起こったかが詳細に描かれている。
オープニングでいきなり画面に映し出される被爆者の写真が凄まじくもむごたらしい。
僕は広島出身で、小学生のころから平和教育を受けているから、こうした映像は何度も見ているのに、61歳になってもなお、慣れることがなく、思わず目をそむけそうになった。
この写真をはじめ、広島赤十字病院に残されていた映像が紹介されたあと、本作はNHKが原爆投下79年目で新たに発見された資料を紹介する。
それが、当時の病院長で、医療活動の指揮をとり続けた元陸軍軍医・竹内釼(けん)氏が残した手帳だ。
本作はこの手帳の中身を紹介しながら、被爆直後の竹内院長が傷だらけの身を押して立ち働いた姿を再現ドラマとして描いている。
竹内院長を演じているのは俳優・山中崇で、すべてが事実に即しているかどうかはともかく、想像もしていなかった人類史上最悪の人災に直面した医者の姿を熱演。
このドラマの合間に、現在94〜95歳になっている被爆当時の看護婦のインタビュー映像が挟まる。
目に涙を溜めて語る彼女たちの証言がまたまことに痛切に感じられ、これだけ高齢になってもはっきりと当時の悲惨な状況や自分たちの胸の内を語っていることに激しく胸を揺さぶられました。
原爆についてはまだまだ埋もれた資料が眠っていることを知ると同時に、映像ドキュメンタリーとして、戦争を知らない世代に訴えかける新たな効果的表現方法を示した秀作。
この拙文を読んで興味を覚えた未見の方には、ぜひご視聴をお勧めします。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑