『バーナデット ママは行方不明』(WOWOW)😉

Where’d You Go, Bernadette
108分 2019年 アメリカ=ユナイテッド・アーティスツ・リリーシング
日本公開:2023年 配給:ロングライド

オスカー女優ケイト・ブランシェットが、異色の伝記映画『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年)のリチャード・リンクレイター監督とタッグを組んだ作品。
カテゴリー的にはコメディに分類されているが、世界を代表する演技派女優と鬼才による映画だけに、一筋縄ではいかない深刻なテーマを含んだ内容になっている。

ブランシェット演じる主人公バーナデット・フォックスは一見、シアトルで夫エルジー(ビリー・クラダップ)、一人娘ビー(エマ・ネルソン)と3人で仲睦まじく暮らす平凡な主婦のように見えて、実は極度の人間嫌い。
家事や雑用はメールを通じてマンジェラという人物に任せきりで、お隣の主婦オードリー(クリステン・ウィグ)とも何かにつけて角突き合っている。

序盤はごく普通のホームドラマのようでいながら、夫と議論したり、オードリーを罵ったりするバーナデットにはどこか心を病んでいるような雰囲気もあり、次第に不気味さが募ってくる。
やがて、バーナデッドがかつては天才と騒がれた建築家で、ロサンゼルスで設計した自邸が大評判を取ったにも関わらず、失意のうちにシアトルへ引っ越してきたことが判明。

果たして、バーナデットの過去に何があったのか。
リンクレイターは要所要所でテレビニュースの映像を挟み、バーナデットがもてはやされた時代を振り返りながら、現在の彼女の胸に潜んだトラウマに迫っていく。

リンクレイター独特のホノボノとしたタッチ、それとは対照的にギスギスした感じのブランシェットの演技が相まって、独特の映像世界を構築することに成功している。
シンディ・ローパーの名曲『タイム・アフター・タイム』の使い方も実に上手い。

終盤でバーナデットが南極へ飛んでからの展開はかなり突飛で、いくらコメディとはいえ、おいおい、こんなのアリかよ、と個人的には思いました。
しかし、エンドクレジットの最後の最後まで見せるリンクレイターの手腕はやっぱりさすが。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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