スウェーデンの才人リューベン・オストルンドが第75回カンヌ国際映画祭で出品2作連続でパルム・ドールを受賞して話題となった作品。
主人公カール(ハリス・ディキンソン)は駆け出しの男性モデルで、彼が歩き方や表情の作り方のレッスンを繰り返すオープニングから引き込まれる。
インストラクターから出される指示はファッションブランド・H&Mを着たらにこやかに、バレンシアガの場合は無愛想な顔つきをしろ、というもの。
H&Mは庶民のブランドなので親しみやすさをアピールしなければならないが、バレンシアガを着るような富裕層は尊大で威張っているからだ。
この出だしから、本作が現代の勝ち組・負け組に分断された格差社会をテーマのひとつにしていることがわかる。
続くシークェンスで、カールは女性モデルの恋人ヤヤ(チャールビ・ディーン)とフレンチ・レストランで食事をしたあと、どちらが勘定を持つかで激しく言い争う。
モデルとしてはヤヤのほうがカールより有名で収入も多く、友だちに食事をおごる気前の良い性格でもあるが、カールとのデートでは男が金を払うものだと決めてかかっている。
だからテーブルの真ん中に伝票が置かれても手を伸ばそうともしないヤヤの態度が、カールには納得がいかない。
ヤヤは一向に怯むことなく、インスタグラムで大勢のフォロワーを持つインフルエンサーでもあり、カールと付き合っているのはフォロワーを増やすためで、いずれはカール以外のセレブの大金持ちと結婚するつもりだ、などとうそぶく。
という展開からも明らかなように、本作のもうひとつのテーマはフェミニズムの問題である。
そんなカールとヤヤは、インスタで宣伝することを条件に、建造費2億5000万ドルの豪華客船のクルージングに招待される。
乗客はロシアの大富豪を自称するディミトリー(ズラッコ・ブリッチ)をはじめ、いずれも大金持ちのセレブ高齢者で、乗務員たちはリーダーのポーラ(ヴィッキ・ベルリン)を筆頭に、乗客からしこたまチップを稼ごうとかしずくようにサービスを続ける。
この船が嵐と海賊に襲われ、カールとヤヤ、ディミトリー、ポーラら8人の乗客と乗務員が無人島に漂着。
水も食料も不足している中、トイレの清掃担当員アビゲイル(ドリー・デ・レオン)が思わぬサバイバル能力を発揮して、それまでふんぞりかえっていた大金持ちたちが服従せざるを得なくなる。
観るものを笑わせながらも深刻なテーマを明確に打ち出し、皮肉を効かせたドラマ作りはなかなかお見事。
ただし、後半の展開は定石通りの感もあり、2時間半弱はいささか長過ぎるようにも感じました。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑