現代の名匠・是枝裕和が自分のシナリオではなく、映画やテレビドラマで人気のライター・坂元裕二のオリジナル脚本を映画化した作品。
主要登場人物3人の異なる視点からひとつのメインストーリーを追う『羅生門』(1950年)と同様の構造を持つミステリー仕立ての映画である。
クリーニング店に勤めるシングルマザーの麦野早織(安藤サクラ)は、小学校に通う息子・湊(黒川想矢)の様子がおかしなことに気づき、担任教師・保利道敏(永山瑛太)に体罰を受けたことを聞き出す。
早織はさっそく小学校へ抗議に出向いたが、最初は当事者の保利が現れず、ひとりだけで対応に当たった校長・伏見真木子(田中裕子)も型通りの謝罪を繰り返すばかりで、そそくさと席を立ってしまった。
その後、早織は二度目の面談に姿を見せた保利の言動に怒りをエスカレートさせ、マスコミに公開された場で謝罪に追い込む。
ここから視点は保利に移行し、湊に暴力を振るった事件の真相をはじめ、早織が理解していた顛末とはまったく異なる顛末が明かされていく。
保利が湊に体罰を加えたことがなかったとすると、湊のほうがウソをついているのか。
最後に彼のパートになり、鍵を握るクラスメート星川依里(柊木陽太)の存在と、この作品が訴えようとしている真のテーマが浮かび上がってくる(ネタバレになるので詳しくは書けません)。
是枝の静謐なタッチ、坂元が様々な布石を打って描いた人間ドラマは絶妙の面白さ。
エンディングの後味もよく、これからは日本でも、こういうテーマをこういう一般映画でごく自然に扱った映画が増えていくんだろうなあ、と思いました。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑