作品賞、監督賞など主要7部門でアカデミー賞を受賞した現在公開中の問題作『オッペンハイマー』(2023年)の副読本的テレビドキュメンタリー。
配給会社のユニバーサルが製作に関わっており、映画の監督・脚本を手がけたクリストファー・ノーラン、原作ノンフィクションの共著者カイ・バードも証言者として登場する。
映画版との違いは第一に、オッペンハイマーの人生が時系列に従って描かれているため、非常にわかりやすいということ。
とくに少年期にいじめられ、学生時代にはいまにも自殺しそうなほど心を病んでいたという病歴が、イラストとナレーションによって端的に説明される。
第二に、当然ながらオッペンハイマーのインタビュー映像が多い。
なるほど、実際の本人はこのような顔つきでこういうことを語っていたのか、と感じると同時に、キリアン・マーフィーの役作りの巧みさ、抑制の効いた名演に改めて感心させられた。
結婚歴のあった妻キティ、オッペンハイマーを共産党に勧誘した愛人ジーン・タトリック、それにオッペンハイマーをロスアラモス研究所の所長に抜擢したレスリー・グローブスも、実物の写真は誰も彼も随分性格がキツそうに見えましたね。
そして、第三に、映画ではまったく触れられず、批判の対象にもなった広島、長崎の被爆地や被爆者の映像がこれでもかとばかりに出てくること。
そうした映像と、原爆を開発したことを後悔しているオッペンハイマーのインタビュー映像が直接結びつけられているので、このインパクトだけは映画以上であるようにも思えた。
まさか、ユニバーサルが映画に対する批判を考慮してこのドキュメンタリーを製作したわけではないだろうが。
映画を観てオッペンハイマーに興味を抱いた人ならぜひチェックしておきたい作品であることは間違いない。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑