ジョルジョ・デ・キリコと言えば、ダダイズム、シュルレアリスム(キュビズムもか?)を代表する画家で、サルバトール・ダリ、ルネ・マグリット、アンディ・ウォーホルに多大な影響を与えた巨匠、という印象が強い。
僕のようにデ・キリコのプロフィールを詳しくは知らなくても、有名なマヌカン(マネキン)をモチーフとした作品群、及び後進の画家がマヌカンを模倣したイラストの類なら、誰もが一度は目にしたことがあるはず。
そのデ・キリコの作品を100点以上集めた〈デ・キリコ展〉が上野の東京都美術館でGWから始まったと聞いて、早速足を運んできました。
20世紀初頭のヨーロッパの画家らしく、当初は主として肖像画を描いていたが、様々な啓示、同時代の芸術家の影響などを受けて形而上絵画の旗手となっていった過程、それぞれの時代の代表作が、5つのセクションに分けて展示されている。
最もインパクトが強いのはやはり、マヌカンを描いた初期の代表作で、「形而上絵画」という新ジャンルが世界に認知されるきっかけともなった『預言者』(1914〜15年)。
デ・キリコは終生、マヌカンのモチーフにこだわり、1930年代にはルノワールの手法を採り入れた『南の歌』、1970年代に入るとポップアート風のタッチで『ヘクトルとアンドロマケ』を描いている。
その半面、自らも従軍した第一次世界大戦終了後は、伝統的な写実主義に回帰し、「ネオ・バロック」と呼ばれる新たな手法も模索していた。
このスタイルの代表作としては、妻のヌードを描いた『横たわって水浴する女(アルクメネの休息)』(1932年)、『風景の中で水浴する女たちと赤い布』(1945年)が印象深い。
そうしたまったく異なる手法で代表作を生み出していたデ・キリコは1960年代、これまでのモチーフを総合的な手法で再現した「新形而上絵画」を創始する。
この時代の代表作『オデュッセウスの帰還』(1968年)では、家屋の床に広がる海で船を漕ぐオデュッセウスが描かれており、これは様々な紆余曲折を経てなお、新たな境地を目指していたデ・キリコ自身の姿を表しているようだ。
ムロツヨシによる音声ガイドを聴きながら、じっくり見て回るのに要した時間は1時間半超。
やっぱり、人間、たまにはこういう芸術と触れ合う時間を持つことが必要ですね、60歳を過ぎても、いや、過ぎたからこそ、か。