劇場公開時に興味をそそられながら、当時は中3だったので勝手に観に行くわけにもいかず、当時の批評、興行的ともに芳しくなかったこともあり、個人的には長らく未見のままにしていた作品。
名脚本家・倉本聰唯一のSFサスペンスで、近年になって再評価する声が高まっている折、ちょうどよくWOWOWが放送してくれた。
世界中にUFOの編隊が出現するようになった1978年、UFOを目撃したり、UFOが発した光を浴びたりした人間は血の色が赤から青に変わるという超常現象が頻発する。
各国政府はなぜかこの異常事態をひた隠しにしていて、血が青くなった人間たちを秘密裏に拉致しているらしい。
そうした最中、京都で開かれた国際科学者会議で、UFOが実在すること、各国政府はその事実を把握しながら一般市民に知らせずに隠匿していることを声高に訴え、狂人扱いされた兵頭光彦博士(岡田英次)が失踪するという事件が発生。
国営放送JBC(NHKがモデル)報道部員の南一矢(仲代達矢)は、五代報道局長(小沢栄太郎)に博士の行方を追うようにと指示される。
折しも、JBCは来年の大河ドラマの主演に抜擢した新人女優・高松夕子(新井春美)を、突然降板させて世間を驚かせる。
イギリスのアイドル、人気ロックバンドのヒューマノイド(1960年代のビートルズ、1970年代のベイ・シティ・ローラーズがモデルか)のパーティーに参加した夕子が麻薬不法所持の容疑で逮捕されたことが原因だった。
しかし、夕子の恋人のテレビ雑誌記者・木所(岡田裕介)は、麻薬は濡れ衣で、本当は彼女が青い血の人間だからではないかと疑惑を抱き、そのことをろ友人のJBC報道部員・南に打ち明ける。
パーティー会場で秘かに夕子のバッグに麻薬をしのばせたのは、UFO関連の極秘任務に従事していた国防庁特殊部隊員・沖退介(勝野洋)。
しかし、沖が惚れ込み、結婚まで考えていた理髪店店員・西田冴子(竹下景子)もまた血の青い人間だった。
日本政府の〝青い血狩り〟は徐々に表面化していき、ついには国民に血液検査を義務づける法律まで制定され、これに反発した国民がデモを起こし、警官隊と衝突する事態へと発展する。
血が青くなった人間は一様に性格が穏やかになるという特長もあり、この設定には本作の前年1977年に公開されたスピルバーグの『未知との遭遇』の影響が感じられる。
そうした人間たちを、ただ血が青くなったというだけでもはや人間ではないと見なし、かつてナチスがユダヤ人を虐殺したかのようにジワジワと〝駆除〟していく過程を、倉本脚本は直接的にではなく、テレビや通信社の報道を通じて間接的に描き、国家ぐるみの陰謀の不気味さ、恐ろしさを表現している。
UFOを画面に出さず、実際に青い血が流れるのも僅か数カットと、昔で言う特撮技術をまったく用いないで全編を押し通している手法も、今見ても非常に斬新で効果的だ。
撮影中に何度か倉本と衝突したという名匠・岡本喜八の静かで力強い演出も冴え渡っており、もっと再評価されてしかるべき埋もれた傑作だと、個人的には思う。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑