東京ドームから原さんの声が消えた⚾

東京ドーム前の広告塔に映された年間指定席のPRビデオ(右上)、主役は松井秀喜氏

東京ドームでの巨人-DeNA3連戦取材もきょうでおしまい。
3日間、それなりに楽しませてもらった中、3試合目になってやっと気づいたことがある。

昨年で退任したから当然と言えば当然なのだが、前監督・原さんの〝開場アナウンス〟が聞かれなくなったのだ。
第3次政権時代の2019~23年は、コロナ禍で無観客だった時期を除き、シーズン中の開場時刻(ナイターは午後4時、デーゲームは午前11時)直前になると、球場係員の配置を確認するため、こんな原さんの声が流れていた。

「みなさん、こんにちは、読売巨人軍監督・原辰徳です。
東京ドームは間もなく開場いたします。

一塁側、いかがですか? 三塁側、いかがですか?
2階席いかがですか?

ライト側、いかがですか? レフト側、いかがですか?
開場いたします!」

ファンサービスとしてではなく、東京ドームの球場職員向けに、あの芝居がかった口調でこんなアナウンスをしていたのだ。
当時も今も、監督自らこんなことをやっていたのは、たぶん原さんだけじゃないかと思う。

それが、今年はごく事務的な男性のアナウンスに変わっている。
というよりは戻っていることに気づいて、ああ、そうだよな、これが普通だよな、と妙に納得してしまった。

そう言えば、第2次原政権時代の2013年には、東京ドームのコンコースに原監督の等身大の〝グータッチ人形〟が置かれていたこともあった。
目を見開き、両手の拳を突き出したポーズを取っていて、ファンがその拳にグータッチをすると、原さんの「連覇!」という力のこもった声が飛び出すんですよ。

巨人は2012年、3年ぶりに日本一となったが、V9(1965~1973年の9年連続リーグ優勝と日本一)以降、2年連続で日本シリーズを制したことがない。
そこで2013年には原さんが「連覇!」と叫ぶ〝グータッチ人形〟を設置し、ファンの応援を煽ろうとしたらしい。

当時は、大手町の球団事務所にもグータッチのできる原さんの等身大ボードがあって、職員のみなさんはこれにグータッチをするよう奨励されていたそうです。
ちなみに、こういうのってちょっと違うんじゃないの? というのが僕の率直な感想で、東京ドームでも球団事務所でも、一度もグータッチをしたことはありません。

さて、そんな良くも悪くも独特だった原時代も今は昔で、今年創立90周年を迎えた巨人は、阿部監督の掲げた「新風」というスローガンの下、文字通り新たなスタートを切ったばかり。
きょうはベイスターズに一矢報いて、4勝5敗と借金1ながら、5位から阪神と並んで同率3位に浮上しました。

なお、代わって4位だったカープはきょうも中日に負け、3連敗で3勝5敗となり、単独最下位に転落。
何だかなあ、この先、大丈夫かしらん。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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