前項『TAR/ター』(2022年)で名演を披露したケイト・ブランシェットが、アカデミー主演女優賞を初めて受賞した作品。
監督、脚本を手がけた才人ウディ・アレンもまた、彼女を「偉大な女優」だと絶賛している。
いつものことながら、ウディ・アレンはこういう日常生活に秘められた悲喜劇を面白く見せるのが非常にうまい。
本作はいつにも増して悲惨な内容であるにもかかわらず、見ているうちについ笑いがこぼれてしまい、救いがたいエンディングすら、ある種爽やかな印象を残す。
ケイト・ブランシェット演じる主人公ジャスミンはかつて人も羨むセレブリティだったが、夫アレック・ボールドウィンの詐欺商法が破綻して一文無しに。
里子の妹サリー・ホーキンスに泣きつき、彼女が暮らすサンフランシスコの安アパート(と言っても広さは神楽坂の我が家と変わらないが)に転がり込む。
ここまで落ちぶれても豪奢な生活が忘れられないブランシェットは、ホーキンスだけでなく、ホーキンスの彼氏ボビー・カナヴェイルにも無礼な発言を連発。
そのうち、実はブランシェットとボールドウィンがホーキンスと前夫に怪しげな投資話を持ちかけ、彼らの生活を破綻させたことがわかってくる。
クライマックスではさらにぞっとするようなオチが待っているのだが、これがサラリと描かれながら、こちらの胸にズシリと重いものを残すのだ。
フィクション、いや、ノンフィクションも含めて、人間ドラマの話術のお手本のような映画である。
旧サイト:2015年08月2日(日)Pick-up記事を再録、修正
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑