最近、世界で大ヒットしたインド映画『RRR』(2022年)のようなエンターテインメント大作は通称「ボリウッド映画」と呼ばれている。
首都デリーと並ぶ大都市・旧ボンベイ(現西インド・ムンバイ)と北インドで話されているヒンディー語の映画であることから、ボンベイの頭文字Bとアメリカのハリウッドをくっつけたもじった造語だ。
しかし、そうした映画で描かれる男性像、女性像は20世紀初頭のハリウッド映画並みに類型的で、現代の多様性をまったく反映していないと、このドキュメンタリーに登場する女性の映画人たちは主張する。
インド映画界にはすでにボリウッド映画ならではの特長をネガティヴに表現した言葉も生まれていて、女性が振り向くまで執拗に求愛することを「イブ・ティージング」、いかにも男性好みの色白でロングヘアの女性を「チクニ・ガール」、そういう女性たちが露出度の高い衣装で踊るダンスを「アイテム・ナンバー」というそうだ。
本作の監督ラヒラ・ブートワラは、子供のころからそうしたボリウッド作品を観て育ち、自分も映画を作りたいという目標を持ちながら、「インドにいては女性としても制作者としても成長できない」と考えた。
そこで、パリのプロダクションで映画制作のノウハウを身につけ、カナダで自分の制作会社を設立。
そんな独立心旺盛で、進取の気性に富んだブートワラが、30年ぶりにインドに帰って制作したのが、このインドで活躍する女性監督たちを描いたドキュメンタリーである。
もともと、世界でも屈指の多言語国家インドでは様々なタイプの映画が作られており、「ボリウッド映画はインド映画の一部でしかない」とキャスティング・ディレクター兼映画祭主催者ウマ・ダ・クンハは言う。
ベテラン監督アルナ・ラジは農村部の女性の性と婚外子をテーマにした映画を作り、自ら現実の農村に足を運んで、そこに住む人たちのための上映会を開き、自ら男性を相手に講演も行う。
『RRR』が公開された2022年、一方ではこのような女性の社会的地位向上を目指した人間ドラマが制作されていることに驚きを感じるとともに、インド映画の奥深さを見せつけられた思いがしました。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑