『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』佐々木チワワ😄😳🤔🤓🥺

扶桑社(扶桑社新書) 191ページ 定価820円(税別)
初版第1刷:2022年1月1日 第4刷:2023年4月10日

最近、悪質ホストクラブによって売春をさせられている女性客の増加、歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる地域で10代の少年少女たちが大量に補導されるといった事件が社会問題化している。
補導された中には小学生で12歳の女の子がいたり、売春をしてでも担当ホストに貢ぎたがる女の子のほとんどが10〜20代の女性だったり、今年60歳のA先生にはどうにも理解できない現象が多い。

昭和生まれの僕にとって、歌舞伎町といえば主としていいトシの男が遊びに行く盛り場であり、学生同士で映画や演劇を見ては居酒屋で感想と持論をぶつけ合う街だった。
ホストクラブにしても、懐に余裕のある独身女性、子育てが一段落した中年女性が遊びに行く店で、Z世代の女の子が「推し」のホストに数百万、数千万円を貢ぎ、その金を稼ぐために売春に走るケースが続出していると聞いても、にわかには信じられなかった。

そういう昭和世代の、今時の若者や歌舞伎町に対する漠然とした疑問に、大変リアルで、わかりやすい回答を提示してくれたのがこの本である。
著者は現役の慶應大の学生で、自らも15歳から歌舞伎町に通い詰め、ホストクラブにもハマった経験から、トー横に集う若者たち、ホストの男性やホス狂(ほすぐるい)と呼ばれる「ぴえん系」の女の子たちに話を聞き、歌舞伎町におけるZ世代の実相に迫っている。

ぴえん系が共通して抱えているのは、ふだん生活している家庭や学校で居場所をなくした孤独感であり、スマホで簡単にアクセスできるSNSでの承認欲求だ。
その中でもホス狂の女の子たちは、そのSNSで自分がいかに「推し」に貢献したか、ホストクラブで高額な酒やサービスを注文し、どれだけ貢いだかを報告し合う。

つまり、ホストとの疑似恋愛は彼女のたちの楽しみであるとともに、店やSNSでのステータスを競い合う競争でもあるのだ。
あげく、売春に走ってしまう彼女たちを笑ったり、病んでいるという一言で片づけたりするのは簡単だが、大きな社会的病巣になっているようにも思える。

ぴえん系のSNSではまた、「推し」のホストや地下アイドルはもちろん、彼らを「推す」女の子の中にも他人にとっての「推し」となる存在が生まれている。
そんな女の子が精神を病んで自傷行為に走り、リスカの自撮り画像をアップすると、同じように病的な素地を持つフォロワーたちから多くの「いいね!」が殺到。

ついには「推し」のホストを逆恨みし、ナイフで刺した女の子がカリスマに祭り上げられ、彼女のインスタグラムに数万人のフォロワーがつくといった現象も発生している。
まさにSNSを通して心の病が伝染しているかのようだ。

タイトルの「ぴえん」をはじめ、「卍」「量産系」「地雷系」「チー牛」などなど、こちらにとっては初めて目にするワードの意味や由来も丁寧に解説されていて、大変勉強になりました。
ちなみに、「ぴえん」はプロ野球選手の間でも流行していて、今年WBCで世界一となった侍ジャパンを描いたドキュメンタリー『憧れを超えた侍たち』には、右手小指を骨折した西武・源田がベンチ裏で「ぴえん、ぴえん」とこぼす姿が描かれている。

😄😳🤔🤓🥺

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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