これは面白かった!
庵野秀明のリブート版最高峰『シン・ゴジラ』(2016年)を超えたのかどうか、という興味を持って観るファンが多いだろうが、同じゴジラ映画でもまったくテイストと切り口の異なる作品である。
これまでのゴジラ物が『シン・ゴジラ』も含め、基本的に時代背景を現代及び近未来としていたのに対して、本作は終戦直後の1945〜1947年に設定。
大空襲に見舞われた焼け跡で人々が飢餓と困窮に喘いでいる中、追い打ちをかける自然災害のように海からゴジラが上陸して、逃げ惑う人々を踏み潰し、電車ごと食い千切って咆哮する。
主人公は太平洋戦争で死に損ねた元特攻兵、戦後もなぜ自分は生き続けているのかと懊悩し続けている敷島浩一(神木隆之介)。
彼が闇市で知り合い、行きがかり上、ボロボロになった実家で同居することになった子連れの女、大石典子(浜辺美波)との関係がストーリーの中心となる。
『シン・ゴジラ』は第1形態、第2形態とメタモルフォーゼを経てゴジラに成長するが、本作では割と早い段階で完成形のゴジラが登場するので、いささか拍子抜けしないでもない。
それからしばらく、敷島と典子に、敷島と機雷の撤去作業に従事する船長・秋津清治(佐々木蔵之介)、学者・野田健治(吉岡秀隆)、小僧・水島四郎(山田裕貴)、それに近所の戦争未亡人・太田澄子(安藤サクラ)が絡む人間ドラマがじっくり描き込まれる。
このくだりが非常によくできており、俳優の好演とも相俟って、観ているこちらもシンミリして、ゴジラ映画であることを忘れそうになっていると、彼らの生活や希望を打ち砕く未曾有の災厄としてゴジラが再登場する。
このゴジラの造形と見せ方は、オリジナル版にも『シン・ゴジラ』にも引けを取らないド迫力で、恐怖感も半端ではない。
監督、脚本、VFXを一手に手がけているのは『永遠の0』(2013年)、『寄生獣』2部作(2014、2015年)の山崎貴。
人間ドラマとゴジラを違和感なく融合させているあたりは、さすがVFXの〈白組〉出身、CGを駆使して昭和を再現した『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)で名を馳せただけある。
ゴジラ物では『ゴジラ』第1作(1954年)を最もリスペクトし、思い入れも強いというだけに、本作のそこここにオマージュが盛り込まれているのも同世代のゴジラファンとしてはうれしい。
クライマックスでは大いに手に汗握り、幕切れには少々涙が滲んだ。
僕は滅多に劇場ではリピートしないんですが、これはIMAXでやっているうちにもう一度観に行こうかな。
今週末から秋季キャンプ取材や帰省で東京を離れるので、再来週まで千客万来が続いてほしいものです。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑