1991年1月、政府軍とイスラム系反乱軍が激しい内乱を繰り広げていたソマリアの首都モガディシュから、北朝鮮と韓国の大使館員たちが協力し合って脱出を試みた実話を映画化した作品。
不勉強にしてこういう事件があったことはまったく知らなかったが、発生当時は韓国政府が南北間の緊張関係への影響、とくに北朝鮮の関係者とその家族の身に危険が及ぶことを考慮し、真相をほとんど明らかにしなかったのだという。
事件が発生する直前の1990年12月、まだ国連に加盟していなかった北と南は、お互い先に加盟国として認められようと、投票権を持つアフリカ諸国でロビー合戦を繰り広げていた。
冒頭、韓国のハン・シンソン大使(キム・ユンソク)がソマリアのバーグ大統領への手土産を持って大統領官邸に向かっていると、機関銃を携えた反乱軍のグループに襲われる。
ところが、実はこのグループは北朝鮮のテ・ジュンギ参事官(ク・ギョファン)に雇われ、反乱軍を装って韓国側のロビー活動を妨害するのが目的だった。
一方、韓国側のカン・デジン参事官(チョ・インソン)は、反乱軍は北朝鮮から武器を買っているという情報をアメリカ人記者に耳打ちし、記事にさせて北とソマリア政府の間に楔を打ち込もうとする。
こうした足の引っ張り合いが続いている中、反乱軍の攻撃が激化し、南北双方の大使館が襲撃される。
最初に大使館から逃げ出した北朝鮮側のリム・ヨンス大使(ホ・ジュノ)は韓国大使館の前で匿ってほしいと頼み込むが、過去の経緯からハンは頑なに受け入れようとしない。
ほうっておいたら殺されるかもしれないんだからとりあえず大使館の中に入れてやればいいじゃないか、と日本人の僕たちは思う。
が、南北両国の国民感情の根底にある憎悪と不信感は、こういう極限状態にあってもそう簡単に棚上げできるものではない、というが観ているうちにだんだんわかってくる。
リュ・スンワン監督は息が詰まるような緊張感を持続させながら、時折観ているこちらの笑いを誘うようなユーモアと人情味のあるエピソードを挟んで、重苦しい題材を一級品のエンターテインメントに仕上げている。
クライマックスのカーアクションがハリウッド超大作並みの迫力だった半面、最後の最後まで南北間の亀裂が影を落とす幕切れも独特の余韻を感じさせた。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑