噂話・笑い話・思い出話「NGリスト」

NHK〈ニュース7〉がジャニーズ事務所の会見における「NGリスト」の存在を報じた5日以来、ネットやメディアでこの言葉を見聞きしない日はない。
そこで思い出したのが、まだ駆け出しの野球記者だった1989年ごろ、古巣・日刊ゲンダイの先輩記者に聞いたこんな話である。

「〇〇(某セ・リーグ球団)の選手ロッカーには、メディアや記者の名前を一覧表にして貼ってあるんだ。
一番上が安心して何でも話していい会社で、一番下がうっかりしゃべっちゃいけないところ。

一番上はベースボールマガジンや大手一般紙で、その下が朝刊スポーツ紙。
日刊ゲンダイなんてのは当然、一番下だからな、そのつもりで取材しろよ」

しかし、僕自身はその一覧表を実際に見たことがないので、先輩の言うことが本当だったかどうかはわからない。
個人的な経験から言えば、このセ球団には日刊ゲンダイ時代、いろいろと取材の便宜を図っていただき、フリーになってからも何かとお世話になっています。

球界にはこういう真偽不明のNG話が多く、記者の誰それが球団や監督と揉めた、どこそこの社が出禁になったという噂が間欠泉のように吹き出す。
選手を私利私欲のために利用しているとして、名前と顔写真をロッカーに貼り出されたマスコミ関係者もいる、と情報通の大手スポーツ紙記者に聞いたこともあるけど、これも僕は実際に見たことはありません。

ただ、こういうネタは表向きにあやふやな噂として流れるからこそ、人口に膾炙しやすく、業界に広まるスピードも速い、とも言える。
今回のジャニーズ会見のNGリストも、ボカシや黒塗りの入った映像ばかりが流されているから、テレビ視聴者やネットユーザーの好奇心を刺激しているのではないか。

プロ野球チームのロッカーに名前と顔写真が貼り出された事例で、僕が一度だけ事実を掴んだのは、正体を隠して球場に出入りしていたある暴力団関係者のケース。
球界全体が野球賭博疑惑に揺れていた2016年、NPBが貼り紙を配布し、「この人物を見かけたり、秘かに接触を求められたりしたら、すぐ連絡してください」と呼びかけたのだ。

ここまでくると、NGリストじゃなくて、指名手配書ですけどね。
興味のある方は、当時の拙文2016年7月9日付東スポ『赤ペン‼︎』を御一読ください。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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