舞台は1969年、北アイルランドのベルファスト、主人公の少年バディ(ジュード・ヒル)の目の前に突然暴徒と化した大人たちが現れ、「カトリックはこの街から出ていけ!」と叫びながら家屋や店舗を破壊し始める。
バディ一家が暮らす地域は昔からプロテスタントの居住区で、このころから暴力を用いてカトリックを排除しようとする強硬派が登場。
両宗派の対立はやがて北アイルランド紛争と呼ばれる武力衝突へと発展、1997年まで続いたとも、最終的に収束したのは2007年だったとも言われる。
バディ一家の宗派はプロテスタントだったが、父(ジェイミー・ドーナン)は強硬派のリーダーとなった幼馴染みビリー・クラントン(コリン・モーガン)から協力するよう脅され、生まれ故郷から引っ越すことを考え始める。
しかし、まだ9歳のバディにとって、ベルファストは父と母(カトリーナ・バルフ)、兄ウィル(ルイス・マカスキー)、祖父ポップ(キアラン・ハインズ)、祖母グラニー(ジュディ・デンチ)とずっと一緒に暮らしている生まれ故郷。
近所には一緒にサッカーをする友だちがいて、小学校ではクラスメートの女の子キャサリン(オリーヴ・テナント)と仲良くなっているとあり、引っ越しなんて嫌だと激しい拒否反応を示す。
果たして、バディとその一家はどうなるのか、監督、脚本を手がけたケネス・ブラナーは、愛情と郷愁を込めて、ユーモアたっぷりに描いていく。
バディはブラナーの分身で、幼いころに観て影響を受けた映画『真昼の決闘』(1952年)、『リバティ・バランスを射った男』(1962年)、『恐竜100万年』(1966年)、『チキ・チキ・バン・バン』(1968年)、テレビドラマ版『スター・トレック』(1966〜1969年)の画面が挿入される。
スピルバーグの『フェイブルマンズ』(2022年)と同様、ブラナーの幼少期に材を採った自伝的作品で、ネタにされている映画が一部かぶっているのが、同世代の僕としては面白い。
いまや大スターとなり、本作でアカデミー脚本賞を受賞した現在のブラナーはベルファストには住んでいないが、9歳までにこの街で経験したことが、のちの人格形成と表現活動の核を成していることがよくわかる。
オススメ度A。
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