バングラデシュの海辺の村で暮らす少女たちが、サーフィンに生き甲斐を見出し、貧困や親の無理解にめげず、懸命に生きていく姿を描いたドキュメンタリー作品。
オープニングでひたすら波乗りを続ける13歳の主人公ショーベの姿が映され、たちまち引き込まれるが、観ているうちに彼女の置かれた過酷な環境に慄然とさせられる。
ショーベが生まれ育ったのは、バングラデシュでもとりわけ保守的な土地柄と言われる南部の都市コックスバザール。
彼女はこの街で、同い年のアーイシャとともに、ボランティアがサーフィンを教えるクラブ〈バングラデシュ・サーフ・ガールズ&ボーイズ〉に通っている。
しかし、この国にはいまだに根強い女性差別の風習が残っており、10代前半での児童婚がごく当たり前のこととして行われているほど。
母親は娘に理解を示しているのかと思ったらちっともそんなことはなく、ショーベの母親もサーフィンには猛反対しており、練習で帰宅が遅くなったりすると、学校にも行かせてもらえず、物売りをして生活費を稼いで来なければならない。
家族と別居している父親もまた、ショーベを早く結婚させることしか考えていない。
14歳か15歳までに嫁ぎ先を決めなければいけない、サーフィンのために嫁入りが遅れたら親の評判まで悪くなる一方だ、と本作のカメラに向かって声を荒らげる。
そんなショーベがしばらくクラブに来なくなって、コーチのラシェドが心配して彼女の家を訪ねると、叔父によってオマーンへ出稼ぎに行かされる寸前だった。
しかも、実際は13歳なのに、25歳と年齢を詐称してパスポートを取得させられていた。
果たして、彼女たちに未来はあるのか、サーフィンを続けて、大きな大会で勝ちたいという夢を叶えることができるのか。
人生がいかに過酷で、現実の壁は厚く、望んだような結果がついてこなくとも、スポーツは人に生きる糧を与えてくれる、という真理が胸に染みる。
可能ならノーカット版を観てみたいですね。
アカデミー短編ドキュメンタリー賞受賞作『スケボーが私を変える アフガニスタン 少女たちの挑戦』(2019年)を彷彿とさせる佳作でした。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑