辺見じゅん氏が1989年に発表した傑作ノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文藝春秋)を映画化した作品。
第二次世界大戦終了後、シベリアの強制収容所に抑留された山本幡男(二宮和也)ら日本人兵士の過酷な運命が描かれる。
原作の素材となっている事実自体が非常に重いだけに、どのようにアプローチしても一定の水準に達することだけは最初から保証されていたように思う。
日本国内のロケ地に再現した収容所や工事現場のセットもしっかり作り込まれており、戦史を再現した映画としては十分合格点に達していると言っていい。
野球の取材と原稿の執筆を生業としている身としては、収容所内で草野球の試合が行われ、慶応大の4番打者だったという原幸彦(安田顯)がホームランを打つシーンにはちょっとうれしくなった。
ただ、そのボールを拾いに行く犬クロの存在をはじめ、このくだりがフィクション臭く感じられたのも確か。
また、山本役の二宮和也がラーゲリ収容中、何度営巣に入れられてもやつれず、終盤近くまで顔がきれいなことにも違和感を覚えました。
こういう映画はスターのイメージを大切にするより、史実をリアルに再現することにウエートを置いたほうが、より訴求力のある感動的な作品になったはず。
そもそも、原作ノンフィクションの主眼は、山本をはじめ、シベリアで客死した抑留兵たちの姿を通して、過酷な戦争の悲劇や非人道性を訴えることにある。
それを、この映画化作品は今時のスター俳優を使い、夫婦愛や家族愛の物語に置き換えようとしている。
狙いはわかるけど、やっぱりちょっと無理があったんじゃないかなあ。
難しいことは深く考えず、たださめざめと泣くにはうってつけの映画かもしれないけど。
オススメ度C。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑