主人公・成瀬司(阿部寛)は犯人逮捕のためなら上司への反抗、服務規定違反、令状無しでの容疑者恫喝も辞さない県警捜査一課のベテラン刑事。
そんな一昔前の〝鬼刑事〟が連続アポ電強盗事件を捜査中、署内で部下へのパワハラを告発され、警察音楽隊に左遷(職務等級上は一応昇格)となる。
音楽隊の勤務先は県警本部から離れた郊外にあり、警ら隊や交通課を兼務しているメンバーたちもモチベーションの低い若者ばかり。
成瀬も小学生時代に和太鼓を叩いていた経験しかなく、ドラムスを任されたものの、県知事が招待された初の演奏会で大失敗してしまう。
何かと〝刑事風〟を吹かせるため、当然ながら若い署員たちの反発も買い、音楽隊でも総スカン。
しかも、私生活では2年前に離婚しており、娘・法子(見上愛)も元妻に引き取られ、家に帰れば認知症になった母・幸子(倍賞美津子)の面倒も見なければならない。
そんな〝人生の敗者〟に転落する寸前の窮地からどう巻き返していくのか。
主演が阿部寛だからさぞかしカッコイイ見せ場が待っているのだろうと思ったら、結構情けない場面の連続で、おいおい、大丈夫かと思わせながら、最後まで飽きさせずに引っ張る。
個人的には、阿部が執務室で演奏会のチケットにナンバリング・スタンプを打ちながらリズムを刻み、これにトランペットの来島春子(清野菜名)が靴先で呼応して、静かなセッションを続けるシーンが好きです。
しかし、クライマックスからエンディングにかけては趣向を盛り過ぎた感が強く、バタバタと話が進んでしまい、感動的とまではいきませんでしたね。
ただ、昭和時代からの映画ファンにとって良くも悪くも強烈に印象に残るのは、76歳になった倍賞美津子の認知症演技。
上手いし、面白いし、いまでも独特の可愛さを感じさせるし、熱血モードの映画全体の中で絶妙のポジショニングを占めてはいる。
だけど、最近、元夫のアントニオ猪木さんが亡くなり、いろんなメディアに奥さんだった倍賞さんの若いころの、瑞々しく、はち切れるような姿のスナップ写真が溢れ返ったばかりでしょう。
萩原健一さんが存命だったらどんな感想を抱いただろうな、と、しょうもない想像をしてしまいました。
個人的に、かつて自叙伝『ショーケン』(講談社、2008年)の構成を務めた際、倍賞さんとの思い出を萩原さんから散々聞いていただけにね。
以上、余談でした。
昔の倍賞美津子を知っている映画ファンにはオススメ度B。
そんなの関係ない今時のファンにはオススメ度C。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑