バービーちゃん人形(と日本では昔からこう呼ばれていた)の世界をマーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング主演で実写映画化し、世界的大ヒットを記録している作品。
と言われても、元ネタを日本製リカちゃん人形ほども知らないA先生などには、いったいどこが面白いのか、実際に観てみるまではまったく想像もつきませんでした。
ところが、映画が始まってから約20秒。
古典的名作のオープニングを見事にパロディ化したプロローグ映像に圧倒され、爆笑し、この作品の内包する意義や毒や哲学までがこちらの脳裏に刷り込まれて、これはもうアメリカ映画史に残る傑作に間違いない、と確信してしまった。
最初の舞台は、実際のバービー人形と同様、ロビー扮する定番バービーをはじめ、変てこバービー(ケイト・マッキノン)、大統領バービー(イッサ・レイ)、作家バービー(アレクサンドラ・シップ)など数種類のバービーが暮らすバービーランド。
そこにはまた、恋人未満のボーイフレンド、ゴズリング演じるスタンダードタイプのケンを筆頭に、キングズリー・ベン=アデル、シム・リウ、チュティ・ガトゥら様々なタイプのケンがいる。
このバービーランドで大勢のバービーとケンが歌とダンスを繰り広げたあと、ロビーの足にセルライト(劣化)が始まっていることが発覚。
これを修理してもらうべく、ロビーはゴズリングを連れてバービーランドから人間世界へ繰り出し、ロサンゼルスのバービー人形のメーカー・マテル社へ乗り込んでいく。
そこはバービーランドのような女性中心社会かと思ったら、マテル社のオフィスにいるのはCEO(ウィル・フェレル)を筆頭に上から下まで男ばかり。
さらに、人間界で自分を所有していた女の子サーシャ(アリアナ・グリーンブラット)に会ったロビーは、「バービー人形は女性に対する性的差別を助長するオモチャだった」と批判されて大変なショックを受ける。
一方、ゴズリングは図書館で男性社会に関する専門書を買い漁り、様々な企業の入社試験を受けて、バービーランドを女性から男性中心の王国「ケンダム」に変革しようという野望を抱く。
ゴズリングが一足先にバービーランドにトンボ返りした間、ロビーはバービー人形の創始者ルース・ハンドラー(リー・パールマン)、サーシャの母グロリア(アメリカ・フェレーラ)の力を得て、バービーランドの主導権をめぐるケンたちとの戦いに突入。
フェミニズムが前面に出過ぎた頭でっかちな映画だったらイヤだなあ、と思ったらちっともそんなことはなくて、むしろ筋金入りのフェミニストが観たら怒り出すんじゃないかと思うほど、フェミニズムそのものを娯楽の材料に昇華している。
ロビーがビーチで言い寄ってくる人間の男たちに向かって、「アタシにはヴァギナがないの! ケンにもペニスが付いてないんだからね!」と言い放つ場面には大笑いさせられました(なお、日本語字幕では「ツルパン」という隠語に置き換えられています)。
バービー人形の世界をこれほど大胆なミュージカル・エンターテインメントに翻案したグレタ・ガーウィグの才能とセンスに脱帽。
こういう映画化を許可したバービー人形の製造元マテル社の度量にも感服しました(日本のリカちゃん人形じゃこうはいかないだろうからね)。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑