わが国の『日本のいちばん長い日』(1967、2015年)になぞらえれば、「パリのいちばん長い8月」となろうか。
第2次世界大戦末期、フランスでレジスタンスの活動が1944年8月7日から本格化、同月25日に連合国軍がパリに進攻し、ナチスドイツの占領から解放されるまでを壮大なスケールで描いた戦争映画の超大作である。
序盤では、抵抗運動の指導者・ドゴール将軍の懐刀ジャック・シャバン=デルマス(のち首相)を演じるアラン・ドロンが緊迫感を盛り上げ、物語をリード。
レジスタンスの闘士イヴォン・モランダのジャン=ポール・ベルモンド、アンリ・カルチャー中尉のジャン=ピエール・カッセル、カメオ出演的なマルセル・ビジアン軍曹のイヴ・モンタン、カフェのマダムに扮したシモーヌ・シニョレなど、脇を固めるフランス俳優陣もそろっていい味を出している。
しかし、本作の実質的な主役は、最終的にパリの爆破を断念したナチスのパリ防衛司令官・コルティッツ将軍に扮したドイツの名優ゲルト・フレーベだろう。
ヒトラーの命令によってパリのあちこちに爆弾を仕掛けさせながら、芸術の都を灰燼に帰させることをよしとせず、独断で破壊計画を中止し、自ら連合国側に投降する葛藤と心境を大変巧みに表現している。
監督は巨匠ルネ・クレマンで、記録映画のフィルムとロケ撮影を巧みにつないでクライマックスのパリ解放の日まで見る者を引っ張ってゆく。
パリ市民が歓喜に沸く中、主のコルティッツ将軍がいなくなった司令官室の電話口で「パリは燃えているか?」とヒトラーが叫び続けている幕切れは、いまも映画史上屈指の名ラストシーン。
これほどタイトルとラストシーンがピタリとハマった名画もほかになく、わが国でも映画、テレビなどで散々模倣されたが、当然ながらオリジナルほどカッコよく決まった例はひとつもなかった。
ちなみに、アニメ『ルパン三世』(よみうりテレビ)の第1話(1971年10月24日放送)のサブタイトルも『ルパンは燃えているか・・・・?!』だった。
オススメ度A。
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旧サイト:2015年09月3日(木)Pick-up記事を再録、修正