前項の東映映画『あゝ決戦航空隊』(1974年)の原作である。
1972年に刊行された文藝春秋社版は絶版となっているが、終戦60周年の2006年にグラフ社から復刊されたもの。
巻頭に大西直筆の遺書が掲載されているのをはじめ、非常に資料的価値の高い貴重な作品。
著者は戦時中、第三期特別操縦見習士官で、「同期生の半数以上が特攻となって沖縄で散華している」と作品中で吐露している。
そうした立場を生かして、執筆当時存命中だった帝国海軍の生き残りに詳細な取材を敢行。
映画版では描かれていなかった大西の幼年期、パイロット時代の逸話など、大変興味深い事柄が多い。
しかし、大西への思い入れがあまりに過剰で、いささか持って回った表現が鼻に突く。
自分が気に入っているエピソードや談話を何度も繰り返し記述するなど、作品全体の構成を損なっている部分も少なくない。
最も食い足りないのは、大岡昇平の『レイテ戦記』のように、特攻の実際についてほとんど触れていないことで、これが映画版の弱味にもなっている。
脚本化した笠原和夫によれば、監督の山下耕作が特攻を美化せんがための意図的な演出を施している面もあるようだが。
とはいえ、それでも、著者の大西論は今日においてもなお十分傾聴に値する。
とりわけ、「国家の論理」と「国体の心情」の概念の対立を鮮明にした上、大西を「国家の論理」の側に立たせた論旨には感服させられました。
旧サイト:2010年08月29日(日)Pick-up記事を再録、修正
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