PICKUP前項・西岡文彦氏の名画謎解きシリーズ、『謎解きゴッホ 見方の極意 魂のタッチ』(2016年/河出文庫)に連なる1冊。
順序としてはこの『モナ・リザ』のほうが先に出版されており、こちらが好評だったことから『ゴッホ』も上梓、執筆の運びとなったらしい。
『モナ・リザ』が世界的名画で、作者レオナルド・ダ・ヴィンチが美術のジャンルを超えた歴史上の人物であることは誰でも知っているが、だからといって、現代のわれわれが『モナ・リザ』を見て感動を新たにすることはない。
それはいったい何故なのか、というわれわれが普段意識したことのない「謎」を解き明かすところから本書は始まる。
それは人間の美意識や審美眼に備わった不可逆反応なのだ、という著者の解説は、言われてみれば、なるほど、そうか、と思わず膝をたたきたくなった。
人間の美に対する感覚というものは、徐々に養われていくものではなく、『モナ・リザ』のような傑作に接することで一気にレベルを引き上げられると、二度と元のレベルに下がることはない。
だから、書物や映像で見慣れた『モナ・リザ』の実物を見ても、意外に小さいんだな、と思うくらいで感動を覚えることはない、というのだ。
そういう前提に立って、著者は『モナ・リザ』の成り立ち、モデル論争、革新的技法の数々を僕のような素人にもわかりやすく説明していく。
最も興味深いのは、『モナ・リザ』の微笑はなぜ神秘的に見えるのか、どこがごく普通の微笑と違うのか、という論証である。
『モナ・リザ』の顔を四分割し、左上と右下、右上と左下が違う表情をしている、という指摘には、まさに目から鱗が落ちる思いだった。
前景の『モナ・リザ』だけでなく、一般的に見過ごされがちな背景にも、ダ・ヴィンチが後世の印象派に影響を与えた斬新なテクニックが凝縮されているという。
さらに、実は『モナ・リザ』が未完成であり、ダ・ヴィンチはあえて完成させなかったという解説にも大変驚かされた。
『モナ・リザ』はモデルを再現した「肖像画」を超越し、普遍的な人間像を描いた「人物画」であり、このジャンルの嚆矢となった唯一無二の傑作として永遠不滅の生命を得た。
だからこそ、彼女の微笑も時代を超えた神秘的な魅力を放ち続けているのかもしれない。
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