ベストセラー作家・伊坂幸太郎のミステリー小説『マリアビートル』を、ハリウッド資本で映画化したアクションコメディーの超大作。
ただし、日本の描き方に違和感を覚えた部分も多く、個人的には一種のファンタジーに分類したい。
主人公の殺し屋レディハグ(ブラッド・ピット)が、現金1000万ドル入りのブリーフケースを奪ってこいという依頼を受けて東京駅から新幹線(作品内では「高速鉄道ゆかり」)に乗り込む。
このオープニングの描写から奇妙奇天烈で、新幹線のプラットホームにコインロッカーや食堂があったり、車両にテレビのグルメ番組のマスコットがラッピングされていたり、さらには車内をそのマスコットのかぶりものがウロウロしていたりする。
ターゲットのブリーフケースを持っているのはタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の殺し屋コンビ。
彼らはロシア人ギャングのボス・白い死神(マイケル・シャノン)の息子(ローガン・ラーマン)を中国人マフィアのアジトから救い出し、死神が身代金として用意した1000万ドルを返すために京都に向かっていた。
その1000万ドル入りブリーフケースを秘かにレディハグが頂戴し、盗まれたと知ったタンジェリンとレモンは大慌てで車内の探索を開始。
車内もまた実際の新幹線とは大違いで、全席PC完備された車両があれば、高級酒の並んだバー、車内販売用の飲食物を並べた倉庫みたいなところもあり、グリーン車ではなく一等車は左右ではなく真ん中に一人掛けのシートが置かれている。
一等車には一人旅をしているイギリス人女学生プリンス(ジョーイ・キング)がいて、日本人の殺し屋・木村雄一(アンドリュー・小路)が彼女の命を狙っていた。
…という具合に、新幹線ゆかりに乗り合わせた殺し屋たちがくんずほぐれつしている間に、過去の経緯や入り組んだ人間関係の説明が挿入され、クライマックスへと突入する。
あまりに現実離れした描写が続くので、個人的にはいまひとつのめり込めなかったが、途中から新幹線に乗り込む木村の父親(真田広之)のキャラクターが出色にして秀逸。
終盤のヤマ場ではレディハグと運命論を交わしたり、死神相手に久々に力の入る殺陣を披露したりと、邦画に出演していた若き日の真田を知るファンにとってはうれしくも懐かしい場面が続く。
監督はX-MENシリーズのスピンオフ作品『デッドプール2』(2018年)で知られるデヴィッド・リーチ。
クセの強い作風と笑いのセンスは僕の好みには合わないけれど、独特の世界観にハマっちゃうコアなファンも多いでしょうね。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑