テレビ朝日の大ヒットシリーズが、開局50周年記念作品として初めて映画化されたもの。
この作品の撮影中、僕は主演の水谷豊さんに会ってインタビューした思い出があるんですよ。
※以下、旧サイト:2008年05月8日(木)Pick-up記事を再録、一部修正
お話そのものはよくできています。
無理な設定や辻褄の合わない部分も目につくけれど、見ている間はそれほど気にならない。
かくも大がかり、かつ細かいゲーム性を織り交ぜた犯罪を、観客を混乱させることなく、丁寧にオチまで描ききっている。
ここまで練り上げられたシナリオも滅多にありません。
でも、何だか古沢良太氏らしくないテイストだなあ、と思ったら、脚本は戸田山雅司さんでありました。
ただねえ、無茶な筋書きで観客を引っ張り回すのなら、最後は「あー、面白かった」とノーテンキに思わせてほしい。
『踊る大捜査線 THE MOVIE』第1作(1992年)はそういう映画だった。
そのぶん、肝心の犯人像のキャラクターが希薄に過ぎるという憾みが残り、それが唯一の欠点だったのである。
ところが、こちらは逆に、犯人像が濃過ぎるのだ。
いまだ記憶に生々しい2004年のイラク日本人青年殺害事件を素材にしているために。
念入りにとでも言おうか、ネットに流れたあの映像を彷彿とさせる場面までつくっている。
ここで思わず固まった観客も少なくないだろう。
出来栄えは及第点以上で、面白いことは面白く、観て損する映画ではない。
しかし、観終わったあとで、ノーテンキに「あー、面白かった」と言う気分にもなれません。
ただ、昔はそういう議論の的になる映画が記憶に残り、語り継がれたものだが、いまはどうなんだろうなあ。
そういう意味で、単純に批判され、忘れ去られてほしくはない、という思いもあります、矛盾するようですが。
ところで、この映画の撮影中だった昨夏、東映の大泉撮影所で、僕は主演の水谷豊さんに会っている。
萩原健一さんの自叙伝『ショーケン』の構成の仕事を抱えており、テレビドラマ『傷だらけの天使』(1974〜75年、日本テレビ)に関する事実確認のためにお話を伺いたいとお願いしたところ、快く取材に応じて頂いたのです。
この『相棒-劇場版』は、水谷さんにとっては『逃れの街』(1983年、工藤栄一監督)以来、実に25年ぶりの主演映画だった。
その『逃れの街』、学生だったぼくはやはり新宿の映画館で見ている。
確か、アルバイトをしていた同級生の女の子にタダでこっそり入れてもらったんじゃなかったかな(^^;。
そんな話をすると、水谷さんは笑った。
そのときはまさか、『相棒』がこんなに深刻な要素を含んだ映画だとは思いもしなかった。
帰り際、水谷さんから握手を求められたときは、正直言って大変感動しました。
この映画のラストシーンでも、水谷さん演じる杉下右京が重要な登場人物に握手を求める。
この場面があるだけで、ぼく自身は何だか妙に、ほんの少しだけ救われたような気持ちになったのでした。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑