『シン・ゴジラ』(2016年)はグサグサ刺さってきたが、『シン・ウルトラマン』(2022年)はいまひとつピンと来なくて、『シン・仮面ライダー』はスルーしてもいいかと思いながら公開終了前に劇場へ足を運び、やっぱり観ておいて正解だった。
…と感じた僕と同世代のファンは多いんじゃなかろうか。
週刊少年マガジンの連載とテレビドラマ版のレギュラー放送をオンタイムで楽しんでいた僕たちの世代にとって、「これでこそライダーだ!」と膝を打った最大の要因は、何と言ってもオリジナル版を彷彿とさせるコスチュームとアクションシーンにある。
ライダー1号、ライダー2号、ライダー新1号まで、あのマスク兼ヘルメットをカラー、形状、複眼模様の目の色まで、往年のスタイルそっくりに再現。
細かいようだが、ライダースーツのジッパーが大写しになるくだりがまた、往年のテレビドラマ版の〝手作り感〟を醸し出していて、実にうれしい。
肝心のウルトラマンがスーツアクターではなくCGだった『シン・ウルトラマン』とは、こういう小さな、しかし何より重要なディテールが決定的に違うのです。
敵のオーグ(昔の「ショッカー怪人」)と格闘するアクションシーンでは、ライダーキックの見せ方が出色。
かつてのテレビドラマ版と同じように、ライダーが空中回転する場面、キックを決める場面をそれぞれ別カットで撮っている。
現代のVFXと撮影技術なら、ハリウッドのマーベルシリーズのスパイダーマンのように、縦横無尽なカメラワークですべてをワンカットで見せる派手な場面にもできたはず。
それをあえて、1970年代のようなアナログ感を活かしたシーンに仕上げているところに、庵野秀明監督の原典に対するリスペクトを感じました。
庵野監督はテレビドラマ版だけでなく、マガジンに連載されていた石ノ森章太郎の原作漫画のテイストとアイデアの採り入れ方も実に巧み。
とくに、ライダー1号の本郷猛(池松壮亮)が襲撃されるエピソード『13人の仮面ライダー』が映像化されているくだりにはゾクゾクさせられた。
ライダー2号の一文字隼人(柄本佑)の登場とキャラクター設定も、テレビドラマ版で佐々木剛さんが演じたかつての一文字像とはガラリと趣向を変え、よっぽど原作に近い人物像になっている。
このくだりでは、原作で一文字がマスクを脱ぎ、頬の傷をさらした一コマを思い出した。
次に、これはマーベルシリーズの影響もあるのかもしれないけれど、原作の設定の現代的リニューアルにもセンスのよさを感じた。
かつての「ショッカー」は「SHOKER」となり、改造人間(サイボーグ)は「オーグ」と呼ばれ、「蜘蛛男」は「蜘蛛オーグ」、「蜂女」は「蜂オーグ」と、すべて現代風の名称に置き換えられている。
本作の「蜂オーグ」を演じているのは元乃木坂46、身長159㎝の西野七瀬で、元アイドルならではの彼女の個性に合わせたキャラになっている。
そう言えば、オリジナル版では岩本良子という身長165㎝の女優が演じていて、美人なのに怪人メイクのため素顔を見せられなかったものの、それでも十分、子供向けテレビドラマに似つかわしくない色香を漂わせていたんだよな。
女優陣では、かつての原作、テレビドラマ版ともにいまひとつ印象の薄かった緑川ルリ子役の浜辺美波が好演。
オリジナル版では「蠍男」だった女蠍オーグ役で出演している長澤まさみは、もし続編が作られた再登場しそうですね。
それにしても、週刊少年マガジンの連載とテレビドラマ版のレギュラー放送が始まった1971年、小学3年生で夢中になって読んだり観たりしていた『仮面ライダー』のリブート映画を、まさか60歳になって、シニア割で観ることになるとは思わなかったなぁ。
…と、シミジミ感慨に耽った僕と同世代のファンも多いんじゃなかろうか。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑