2019年、女子サッカーFIFAワールドカップ・フランス大会で、プレイベントとして行われた後期高齢者の試合を描いた短編ドキュメンタリー。
下手をしたらケガ人だけでなく死者も出かねないのに、よくこんな試合を企画したものだと思いながら、観ているうちにどんどん引き込まれた。
ホスト(ホステスか?)チーム、フランス代表の平均年齢は70代、最高齢選手は93歳、サッカー経験者は2〜3人で、ふだんは施設などで暮らしている普通のおばあちゃんたちである。
練習に向かう車中で彼女たちが言うには、「子どもたちは猛反対。何を考えてるんだって。でも孫たちは応援してくれるのよ。おばあちゃん頑張ってって」。
フランスの相手を務めるのは2007年に結成された南アフリカ代表チームで、こちらはある程度のサッカー経験を持つ黒人たち。
ひとりで5人の孫の世話をしながら、「この子たちを産んだ私の娘はみんな死んでしまった。父親たちはどこにいるのかもわからない」とこぼしながら、サッカーの練習に元気に取り組む女性が強烈な印象を残す。
練習内容は南アのほうがレベルが高く、青と赤のユニホーム姿も決まっているが、この国には女性がパンツを履く習慣がないため、近所の住人に奇異な目で見られてしまう。
まだ古いしきたりに従って生きている彼女たちの中には、フランスへ行くのに「生まれて初めて飛行機に乗った」というおばあさんもいる。
そんな南アの女性たちがパリに到着し、出迎えたフランス代表の女性たちが大歓迎。
白人に初対面でキスされたり、ハグされたりして驚き、「私たちの国ではずっとアパルトヘイト(人種差別政策)が続いていたから」と感激している表情が胸に沁みる。
しかし、試合はあくまでも真剣勝負。
ただ、本気でやったら、身体能力に優る南アが前半だけで10点差をつけてしまうだろう。
この国際親善試合を双方のチームにとって楽しく、面白く、意義深いものにするにはどうすればいいのか。
本作の最大の見どころは、その解決策が示されるクライマックスにある。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑