主演が〝ハリウッドのキング〟クラーク・ゲーブル、ヒロインが〝永遠のセックスシンボル〟マリリン・モンロー。
このふたりにからむのが〝ジェームズ・ディーン二世〟と騒がれた青春映画スターのモンゴメリー・クリフト。
そして監督が巨匠ジョン・ヒューストンとくれば、出来不出来はともかく見応えのある娯楽大作を期待してしまう。
ところが、これがさっぱり気勢が上がらない。
モンローはネバダ州リノへ離婚の手続きにやってきた、いまでいうくたびれたアラフォー女。
彼女をモノにしようとするゲーブルは年老いたカウボーイで、最初のうちはカッコイイが、離婚した妻との間にできた子供に愛されておらず、酒が入ると飲んだくれて泣きわめく。
脚本は『セールスマンの死』で有名なピューリッツァー賞作家アーサー・ミラー。
彼が当時妻だったモンローのために映画化脚本を書き下ろしながら、私生活ではすでに別居状態だったことも作品全体に暗い影を落としている。
それでもきれいで可愛くて肉感的なところがモンローのモンローたる所以ではあるのだが。
映画のラスト、野生馬を捕獲しようとして奮闘し、ゲーブルがなるべくスタンドインを使わずに撮影したというアクションシーンは圧巻(ただしヒューストンの強制によるものとも言われる)。
その直後、クタクタで汗びっしょりになったゲーブルがあえぐように言う。
「変わってしまった、世の中は何もかも変わってしまった」
このセリフは、まるで全盛期の過ぎ去った自身の俳優人生を嘆いているかのようだ。
西部地方における人生の晩年を世相の変遷に重ね合わせて描いたアメリカ映画には、『ワイルドバンチ』(1969年)、『ラスト・ショー』(1971年)といった名作があるが、郷愁と感傷をこめて振り返ることでまだしも温かな印象を残していた。
しかし、ヒューストンのタッチは例によって非常に冷徹で、登場人物たちを厳しく突き放し、まったく救いを与えない。
人生における挫折、節目、終焉を迎えた人間をどう描くか、アプローチの方法を考える上で非常に興味深い作品ではある。
ただ、公開当時、興行的には大失敗に終わり、ゲーブルは本作の撮影終了後に心臓発作で急死し、ゲーブルと不倫関係にあったモンローも1年後に薬物による不可解な死を遂げている。
また、クリフトはこの作品以降、本格的な性格俳優に転じようとして苦悩を深め、整形手術の後遺症から悪化したアルコールとドラッグの中毒から回復できず、5年後に心臓発作で亡くなった。
ちなみに、俳優たちの没年齢はゲーブル59歳、モンロー36歳、クリフト45歳と、みんな若かった。
脇でいい味を出しているイーライ・ウォラックだけは本作公開後、半世紀以上経った2014年まで生き、98歳で大往生を遂げています。
オススメ度B。
旧サイト:2012年10月5日(金)Pick-up記事を再録、修正
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