アメリカを代表する伝説的ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイの生涯はこれまでにも2度映画化されている。
ホリデイを人気歌手ダイアナ・ロスが演じてアカデミー主演女優賞にノミネートされた『ビリー・ホリデイ物語 奇妙な果実』(1972年)、ブロードウェイの大物女優オードラ・マクドナルドがトニー賞を受賞した舞台の映画化作品『ビリー・ホリデイ物語 Lady Day at Emerson’s Bar & Grill』(2016年、日本公開:2023年3月10日)で、どちらも正統的伝記映画として評価が高い。
だからなのかどうか、アンドラ・デイがホリデイに扮した本作は、上記2作のようにホリデイ自身の自伝や評伝に拠らず、ヨハン・ハリという作家のノンフィクション『麻薬と人間 100年の物語』(2015年)が原作。
ホリデイが黒人差別を批判した代表曲『奇妙な果実』を歌って政府から目の敵にされ、重度のヘロイン中毒だったことから連邦麻薬局に捕まり、様々な迫害を受けたエピソードを中心に描かれている。
2021年のゴールデングラブ主演女優賞を受賞、アカデミー主演女優賞にノミネートされたデイも、ロスやマクドナルドに優るとも劣らない(と思う)大変な熱演。
『オール・オブ・ミー』をはじめとした代表曲を熱唱する場面の表情も素晴らしいが、ヘロインを打っているところに踏み込まれ、連邦捜査官ジミー・フレッチャー(トレヴァンテ・ローズ)の目の前で素っ裸になって見せるシーンが強烈な印象を残す。
ただし、現代アメリカ社会におけるホリデイという歌手、『奇妙な果実』という名曲の意味合いや位置付けについての基礎知識がない日本人には、いささかわかりにくい部分があるのも確か。
エンドクレジットの楽屋落ちみたいな映像も必要だったかどうか、疑問が残る。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑