現在、韓国在住の脱北者は3万3800人余に上り、最近はMZ世代が急増しているという。
MZ世代とは、主に1980年代半ばから1990年代前半に生まれた「ミレニアル(M)世代」、1990年代後半から2000年代前半の間に生まれた「Z世代」の二つ世代のこと。
かつての脱北者と言えば、生活苦のために命からがら北朝鮮から逃げ出し、韓国社会の片隅で目立たないようひっそりと生きている人たちが多かったが、MZ世代の若者たちはまったく違う。
彼・彼女たちが脱北した理由は、貧乏や困窮以上に、第一に現在の金正恩体制に嫌気が差しているからで、第二に当局の目を盗んでこっそり観ている韓流ドラマに影響され、もっと自由に生きたいという欲求を抑えきれなくなったからである。
20代前半〜40代前半の彼・彼女たちは、まだまだ若いこともあり、韓国にやってきたら好きなことをしなければ損とばかり、様々な表現活動に邁進する。
そうした中、とくに増えているのが、手軽に投稿することが可能で、世界的にも爆発的な広がりを見せているユーチューバーだ。
冒頭に登場する25歳の女性ユーチューバーは、北朝鮮での生活の実態と、脱北を決意するに至った過程と理由をあっけらかんと語る。
私たちは子供のころから公開処刑を見せられて育った、北朝鮮ではみんなが秘かに韓流ドラマを見ている、見つかったら銃殺されるのでDVDは観終わったら焼かなきゃいけない、最近はUSB端子で観られるから便利になった、等々。
当初は北朝鮮での生活を赤裸々に明かしたトークが韓国人の視聴者に大ウケし、動画再生回数は300万回を超え、チャンネル登録者数も30万人以上に達した。
ところが、そんな脱北ユーチューブのブームも束の間、MZ世代がわれもわれもと似たような体験談をアップしたため、瞬く間に飽きられて再生回数も登録者数も激減してしまう。
さらに、北朝鮮の相次ぐミサイル発射によって韓国国民の間に北朝鮮に対する嫌悪感が募り、「北朝鮮の話なんか聞きたくもない」「韓国に来たんなら黙って暮らせ」といったコメントまで寄せられるようになった。
しかし、そこでめげないのがMZ世代の脱北者で、トークのネタを変えたり、いろいろと見せ方を変えたり、あの手この手で視聴者を取り戻そうとする。
とりわけ、アーティスティック・スイミングの選手だった脱北者のパフォーマンスが素晴らしく、ユーチューブの域を超えていると言っても過言ではない。
素材の選び方が実にユニークで、楽しみながら観ていたら、最後にはしっかり感動させられ、大変勉強になったという今年のテレビドキュメンタリーでは一二を争う傑作。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑