リチャード・マシスンの古典的SF小説『地球最後の男』(1954年)3度目の映画化作品で、ウィル・スミスがタイトルロールの主人公、米国陸軍中佐兼細菌科学者ロバート・ネビルを熱演している。
本作の前に映画化された『地球最後の男 オメガマン』(1971年)では、同じ主人公をチャールトン・ヘストンが演じており、これは10代のころに地上波テレビの洋画番組(確かテレビ朝日『日曜洋画劇場』)で観た。
前作は、米ソの細菌戦争によって人類のほとんどが死滅し、ゴーストタウンと化したロサンゼルスのオフィスビル街で、ヘストンが黙々とジョギングしているシーンから始まる。
この場面は早朝の一定の時間、人通りをシャットアウトして行われたそうで、映画小僧だった僕の脳裏にいまでもはっきりと焼き付いている。
本作では舞台をロサンゼルスからニューヨークに変更し、オープニングで荒れ果てた無人の大都会を、スミスがフォード・シェルビーGT500でぶっ飛ばす。
ひび割れた道路、倒壊した橋やビル、あちこちに生い茂った雑草などは今時の映画らしくすべてCGで作られているものの、前作とは趣の異なるリアリティを感じさせる。
前作でネビルと敵対していたのはアンソニー・ザーブ率いるカルト教団のようなグループだったが、本作の悪役はウイルスに感染して人間から吸血鬼と化した「ダーク・シーカー」で、実はこちらのほうがマシスンの原作に忠実なのだそうだ。
リチャード・A・ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)で創造し、ホラー映画定番のキャラクターとなったゾンビは、このダーク・シーカーが下敷きになっているらしい。
ロメロ版ゾンビは最初のうち、ノロノロ歩いては人間にかぶりつくだけの木偶の坊みたいなモンスターだったのが、作品を重ねるにつれて知恵をつけ、しまいには馬に乗るわ、車を運転するわと、生きている人間並に行動力が向上。
さらに、ロメロ版から派生した多くのゾンビ映画では、猛スピードで走ったり跳び上がったり、とても”死体”とは思えない運動能力を身につける。
クライマックスは、そんなダーク・シーカーとスミスが死闘を繰り広げるお約束の展開。
ものすごく面白いとは言えないけれど、スミスの熱演のおかげでまずまず楽しめる出来栄えにはなっている。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑