『デモニック』(WOWOW)🤨

Demonic
2021年 105分 カナダ 
日本公開:2022年 配給:「デモニック」上映委員会

製作・監督のニール・ブロムカンプは長編映画デビュー作の低予算映画『第9地区』(2009年)でブレークし、『エリジウム』(2013年)、『チャッピー』(2015年)などの大作でも独特のアイデアと作風で熱狂的なファンを持つ気鋭の映画人。
5年ぶりの新作となったこの作品は、ブロムカンプがインディペンデント出身の原点に立ち帰ろうと考えたのか、低予算の昔風オカルト映画となっている。

主人公カーリー(カーリー・ポープ)は久しぶりに帰ってきた故郷で幼馴染のサム(キャンディス・マクルーア)やマーティン(クリス・ウィリアム・マーティン)と再会し、絶縁している母アンジェラ(ナタリー・ボート)が入院中で昏睡状態にあると知らされる。
その病院の医師マイケル(マイケル・ロジャース)とダニエル(テリー・チェン)によると、アンジェラは偽昏睡という非常に稀な状態で、問いかけには反応しないものの、実は意識ははっきりしているという。

そこで、この病院で開発されたバーチャル・マシンでアンジェラとカーリーの意識をつなぎ、仮想空間(シミュレーション)にカーリーを送り込んで、アンジェラから話を聞いてほしい、とマイケルが提案。
『マトリックス』シリーズ(1999〜2021年)を彷彿とさせる方式でカーリーが眠り、出来の悪い3D画像と化してアンジェラの記憶に入り込むと、彼女は「早く出て行って!」と取り合おうとしない。

アンジェラは元看護士で、かつて老人ホームに放火して多数の高齢者を殺しており、偽昏睡に陥るまで刑務所に入っていた。
あまりにも残虐な犯罪だったことから、娘のカーリーまで故郷で散々非難され、いったんしばらく転居せざるを得ず、母親とも連絡を絶っていた、という過去の経緯が観ているうちにだんだんわかってくる。

いったい、なぜアンジェラは老人ホームに火を放ったのか、独自にこの事件を調べていたチャーリーは、同じ場所ではるか昔にも大量殺人事件が起こっていたことを突き止める。
さあ、ここからどうなるのかと思ったら、すべてはこの土地に巣食う悪霊の仕業だったらしいと、ブロムカンプ作品としては何とも意外な展開を見せる。

アメリカ本国での評価は芳しくなかったそうで、日本の熱心なブロムカンプファンがネット上に寄せているレビューも概ね辛辣なものがほとんど。
悪霊をモチーフにすること自体はいいとしても、クライマックスの対決では画面が暗くてよくわからず、前3作ほどの盛り上がりに欠けると言わざるを得ません。

オススメ度C。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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