2017年、前年の大ヒットアニメ『君の名は。』(2016年)のテレビ初放送に合わせて、WOWOWが組んだ〈新海誠特集〉の1本。
新海の長編映画第1作で、デビュー当時から大胆な設定の中に純愛、感傷、郷愁を感じさせる独特の作風を確立していたことがよくわかる。
舞台はパラレルワールド(異世界、並行世界)における1996年の青森県津軽半島。
第2次世界大戦後、日本は南北に分断されており、蝦夷(北海道)が世界の半分を支配している共産主義国家群ユニオンの統治下に置かれている。
蝦夷には青森からも見えるほど高くそびえ立つ白い塔があって、この塔は「宇宙の見る夢」、つまり現実の世界とは異次元に存在する「平行宇宙」を発信し、周辺の国々を吸い込もうとしているらしい。
ぼくは中学、高校生時代、SF小説にハマっていた時期があり、すぐにロバート・A・ハインラインの長編『自由未来』や筒井康隆の短編『平行世界』を思い出した。
津軽半島に住む中学3年生、藤沢浩紀(声=以下同:吉岡秀隆)、白川拓也(萩原聖人)のふたりは秘かにヴェラシーラという軽飛行機を製造、白い塔まで飛んでいこうと企んでいた。
浩紀はクラスメートの沢渡佐由里(南里侑香)にこの計画を漏らしてしまい、飛行機が完成したら彼女も塔まで連れて行くと約束する。
しかし、中学を卒業後、ふたりの前から姿を消した佐由里は昏睡状態に陥り、延々と夢の世界を彷徨っていた。
やがて、佐由里は白い塔を設計した科学者エクスン・ツキノエの孫娘で、彼女の見る夢と塔の発信する平行世界がリンクしていることがわかってくる。
佐由里が覚醒すれば、白い塔による平行世界の浸食にストップをかけられる。
それには彼女を塔の近くまで運ばなければならないからと、浩紀は彼女をヴェラシーラに乗せて塔まで飛ぼうとする。
折しも、日本と軍事同盟を結ぶアメリカは、並行世界が日本側に及ぶことに危機感を持ち、白い塔を破壊すべく、ユニオンとの開戦に踏み切った。
というのが大まかなストーリーで、新海はナレーションや説明的セリフを使わず、会話や描写の積み重ねで映画の世界や状況を理解させようとしている。
よく練り上げられてはいるが、91分の尺にあれもこれもと様々な要素を詰め込み過ぎた感もあり、一度見ただけでは内容を把握するのが難しい。
個人的に、こういう雰囲気は好きなんだけどね。
オススメ度B。
旧サイト:2017年12月26日(火)付Pick-up記事を再録、修正
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