傑作『天気の子』(2019年)以来、3年ぶりに公開された新海誠監督の新作長編アニメ。
僕はそれほど熱心なファンではないが、歴史的大ヒットとなった代表作『君の名は。』(2016年)をはじめ、劇場公開された5作品はすべて観ており、今回も封切(もはや死語か?)を心待ちにしていました。
今回は僕にとっても馴染み深い宮崎からお話がスタート。
17歳の主人公・岩戸鈴芽(声=以下同:原菜乃華)が宗像草太(松村北斗)と出会い、廃墟となった学校で「災いの扉=後ろ戸」を開けると、扉の向こう側の常世(とこよ)から現世(うつしよ)へ、地震を引き起こす巨大なミミズが飛び出てくる。
このときから、人間の言葉をしゃべる白猫ダイジン(山根あん)が鈴芽につきまとい、草太の姿を子供用の椅子に変えてしまう。
脚が一本欠けているこの椅子は、鈴芽が4歳だったときに母・椿芽(つばめ、花澤香菜)が誕生日プレゼントとして作ってくれたものだった。
当時は宮城に暮らしており、シングルマザーだったらしいその母は、2011年の東日本大震災で亡くなっていた。
以来、鈴芽は宮崎に住む叔母の環(深津絵里)に引き取られて育てられたのだが、自分が被災地で母を呼びながら泣き叫ぶ夢を繰り返し見ており、そこが後ろ戸の向こう側であることが、観ているうちにだんだんわかってくる。
日本中の廃墟にある後ろ戸は言わば震源地で、そこからミミズが出てきて地上に倒れ込むと、3.11のような地震が発生する。
草太は先祖代々、この扉を閉じる鍵を持つ「閉じ師」で、椅子にされてからはその鍵を鈴芽に託し、日本全国を逃げ続けるダイジンの後を追いながら、愛媛や神戸で後ろ戸の鍵を締めて回る。
この「戸締まり行」が新海アニメならではのスケールの大きさで、いつものユーモアとアットホームな演出を交えた雰囲気にも惹きつけられる。
ミミズが出てこられないようにするには、「要石」と呼ばれる石をミミズに突き刺し、東京の地下にある後ろ戸を締めなければならないのだが、果たしてそこまで辿り着けるのか、『君の名は。』も『天気の子』もヒネリの効いたオチをつけていた新海誠だけに、最後まで目が離せません。
と、大いに楽しませてもらった一方で、これまでの作品にはなかった違和感を感じたのも確か。
それは、『君の名は。』では隕石落下、『天気の子』では集中豪雨と、メタファーとしての災害に置き換えられていた震災が、本作では現実そのままの東日本大震災として描かれていることである。
とくに、鈴芽の育ての親となった環が胸の奥底に仕舞っておいた本音をぶちまける場面では、一瞬アニメを観ていることを忘れて、現実に引き戻されたような気がした。
鈴芽のように11年前にまだ子供だった世代に震災そのものの記憶を伝えておきたい、と新海監督は考えたのかもしれないが、受け止め方には個人差があるでしょうね。
採点は80点です。
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)