スティーヴン・ソダーバーグはもともと、極めて作家性の強い映画監督だったように思う。
アメリカ映画ではなくフランス映画のような長編映画デビュー作、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『セックスと嘘とビデオテープ』(1989年)を初めて観たときの衝撃と感動はいまだに忘れ難い。
しかし、その後は長らくスランプに陥っていたそうで、復活した10年後には大手スタジオに拠点を置く商業監督になっていた。
が、だからと言ってかつての作家性が失われたわけではなく、『オーシャンズ11』シリーズ(2001年〜)のようなアクション・コメディにおいても随所にデビュー当時の才気やセンスを感じさせる。
この『イギリスから来た男』は、そんなソダーバーグが復活したばかりのころに撮った1本。
イギリスの刑務所を出所したばかりの元強盗犯ウィルソン(テレンス・スタンプ)が、アメリカにやってきて自分の娘を殺した音楽プロデューサー、テリー・ヴァレンタイン(ピーター・フォンダ)と対決する。
ストーリー自体はまことに単純で、結末も最初から読めているのだが、ベテランのスタンプとフォンダの存在感を最大限に生かした演出、現在・過去・未来を行き来するカットバックの妙が冴え渡り、ヘミングウェイやハメットの短編のような切れ味を感じさせる。
フォンダの護衛役で『バニシング・ポイント』(1971年)のバリー・ニューマンが出演しているのも僕のようなオールドファンにはうれしい。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑