オープニング早々、この映画には現代では問題とされる表現があるが、当時の記録としての価値を尊重し、オリジナルのままで上映する、という断り書きのテロップが出る。
ところが、このWOWOW放送版では、冒頭から登場する三島の「全共闘は政治家にキチガイ呼ばわりされている」という趣旨の演説からキチガイという言葉をことごとく削除している。
仕方がないとは思うものの、のっけから間が抜けていて、出鼻をくじかれてしまう印象は否めず、こういう修正、という以上の改竄は何とかならないものかと、改めて思わないではいられない。
しかし、そこから先、三島と全共闘の学生たちの白熱のやり取りを前面に押し出し、その合間に当時の学生やジャーナリストのインタビューを挿入した演出は大変効果的で、非常に見応えに富んだ内容になっている。
三島が東大全共闘の〝招待〟に応え、駒場キャンパス900号教室(現講堂)に単身乗り込んだのは1969年5月13日のこと。
学生たちが暴力に訴えるのではないかと懸念した警視庁からは警護したいとの申し出があったが、三島はこれを拒否し、自らが率いる〈楯の会〉の若者たちを教室内に潜伏させて登壇したという。
本作で使用されている映像は、テレビ局で唯一教室での取材を実現させたTBSが撮影したフィルム、及びTBSの緑山スタジオで新たに発見されたフィルムを高精細映像としてレストアしたもの。
現代の学生とは見た目もファッションもまったく違う東大全共闘の学生たちを相手に、黒いポロシャツ姿でマイクを握り、延々と自説を捲し立てる三島の姿は、いま観ても強烈なオーラを感じさせる。
大変意外だったのは、三島と学生たちがさぞかし口角泡を飛ばして罵り合いを繰り広げたのではないかと思いきや、三島のユーモアを交えた弁舌に学生たちが笑い、学生たちの言い分に三島もしっかりと耳を傾け、ある種和やかな雰囲気の中で討論が進行していることである。
実際の討論会が終始穏やかに行われていたのかどうかはわからないが、本作を観る限り、三島、学生の双方ともに、相手の主張を全否定したり、揚げ足を取って罵倒したりといった場面は見られない。
天皇制打倒を掲げるアングラ劇団の主宰者で、現在も演劇活動を続けている芥正彦など、まだ赤ん坊の娘を抱え、タバコを片手に三島に論戦を挑んでいる。
その合間に現在70歳を超えた芥のインタビュー映像が挟まり、ドスの効いた声で三島論を語って見せるあたりは、なかなか他のドキュメンタリーでは味わえない面白さ。
この討論会が行われた2年後、1971年に生まれた監督・豊島圭介は、変に観念的になったり、左右どちらかの政治思想に偏ったりすることなく、現代の若い観客が興味を持って鑑賞できるよう編集している。
三島も全共闘もよく知らない、という人にこそ観ていただきたいドキュメンタリーの快作。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑