1999年に35歳でタンパベイ・デビルレイズの入団テストを受け、同年36歳でメジャーリーグ・デビューを果たしたジム・モリスの実話に基づく物語。
アメリカ陸軍に勤めていた父親の仕事の関係で、何度も引っ越しを繰り返していたモリスの幼少期を描く序盤から引き込まれるものを感じる。
ようやく落ち着いたテキサス州ビッグレイクは野球よりフットボールが盛んな土地柄で、町のスポーツ用品店にはグラブすら売っていなかった。
実在のモリスはここから一念発起、高校時代に活躍して勇名を馳せ、1983年のドラフト1巡目でミルウォーキー・ブリュワーズに指名されるほどの投手になるのだが、本作はこのくだりをあえて省略している。
デニス・クエイドが演じる35歳になったモリスは、父が腰を落ち着けたビッグレイクに舞い戻り、高校で教師をしながら生徒たちに野球を教えていた。
ビッグレイク・アウルズというそのチームがなかなか勝てない中、「もっと強くなろう、夢を持て、諦めてはいけない」とモリスは生徒たちに言い聞かせる。
ところが、高校生たちは「そう言う監督こそ自分の夢を諦めてるんじゃないの?」とモリスに反問。
「もし僕たちが勝ったら、もう一度プロのテストを受けるって約束できる?」と詰め寄るあたりは映画的創作の匂いがするが、観ていてニヤニヤさせられる。
それからアウルズは地区大会で快進撃を始め、決勝戦で強豪チームに逆転勝ちし、ついに優勝。
モリスは高校生たちとの約束を守るべく、自分の3人の子供を連れてデビルレイズのテスト会場へ行く羽目になった。
テストの直前に一番下の女の子が泣き出し、モリスが駐車場でおむつを替えているところへ、「ジミー、おまえの番だぞ」と旧知のスカウトが声をかけにくる場面の雰囲気がいい。
配給会社がディズニーだからか、いくらでも膨らませようのある素材なのに、この映画はいたずらに観客の感情を煽ることなく、淡々とモリスの復帰の道程を辿ってゆく。
野球に理解のない父親(ブライアン・コックス)、モリスにヒーローになってほしい息子ハンター(アンガス・T・ジョーンズ)の点描が効いていて、ラストは思わずホロリとさせられる幕切れが待っている。
ハリウッドの野球映画としては、本作の後に鳴り物入りで続々と公開されたブラピの『マネーボール』(2011年)、イーストウッドの『人生の特等席』(2012年)、ハリソン・フォードの『42~世界を変えた男~』(2013年)など、大スターが出演した諸作品よりもずっと面白く、感動も深い。
野球ファンにとっては、実在のモリスが登場するブルーレイの特典映像『ジム・モリス物語』も必見です。
お勧め度はA。
旧サイト:2013年12月8日(日)PIck-up記事を再録、修正
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