アメリカでは21世紀以降、地方のローカル新聞が次々に廃刊に追い込まれ、いわゆる「ニュース砂漠」と呼ばれる市、町、地域が300以上に上ると言われる。
ジャーナリズムを失うことが市民生活にどのような悪影響をもたらすか、ひいては民主主義の崩壊にまでつながる可能性を指摘したのが2年前のNHKのドキュメンタリー〈BS1スペシャル『ニュース砂漠とウイルス〜アメリカ地域メディアの闘い〜』〉(2020年)だった。
アメリカで制作された本作は、自分たちが生まれ育った町をそうした「ニュース砂漠」にするまいとして戦い続けているローカル新聞と、この新聞を発行している家族の姿を描いている。
原題のストームレイクはアイオワ州の片田舎にある小さな町で、人口僅かに1万5000人と、我が故郷・広島県竹原市の2万3000人よりも少ない。
この町の〈ザ・ストームレイク・タイムズ〉は週2回発行、部数約3000部、従業員数約10人と、極めて規模の小さなローカル新聞。
地元で生まれ育ったジョン・カレンが1990年に創刊し、現在は弟のアートが編集長を引き継いで、毎回家族総出で取材と編集に当たっている。
アートの妻ドローレスはカメラを片手に町の風物や季節ネタを取材し、義姉のメアリーは地元住民のオリジナル料理の作り方を紹介するレシピ欄を担当。
紙面の根幹をなしているのは息子トムが受け持つ地元企業や行政機関の活動を伝える記事だ。
アートの編集方針は、全国規模のビッグニュースより、地元住民の生活に影響を及ぼす身近な情報を重視。
2017年には、水道水の水質汚染の原因が大手肥料メーカーの化学肥料にあり、このメーカーが地元自治体と癒着していたことを10回の連載で詳細に報道してピューリッツァー賞を受賞している。
ただし、そうした栄誉はこの小さな新聞の将来を約束するものではなく、週2回新聞を発行するごとにドラッグストアで売ってもらう部数を交渉している、というシビアな場面もある。
大変貴重なドキュメンタリーだが、例によって85分のオリジナル版を35分もカットした〝超短縮版〟なのが残念。
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑