最近、これほど現代アメリカの国家的犯罪を鋭く抉り出した実話モノの映画は他に例がない。
こういう作品を観ると、ロシアのプーチン大統領を戦争犯罪人と罵っているアメリカの権力者たちも、結局はプーチンと同類ではないのか、という疑念を抑えきれなくなる。
9.11から2カ月後の2001年11月、モーリタニアでモハメドゥ・ウルド・スラヒ(タハール・ラヒム)が同時多発テロに関わった容疑で現地警察に逮捕され、アメリカ政府に引き渡されてしまう。
4年後の2005年、ニューメキシコ州アルバカーキの人権派弁護士ナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は、スラヒが一度も裁判が行われないまま、キューバのグアンタナモ収容所に拘禁されていることを知り、無償で弁護することを決断。
一方、スラヒに対して、ハイジャック犯を勧誘したアルカイダのリクルーターと決めつけているアメリカ政府は、海兵隊検事のスチュアート・カウチ大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)を担当検事に指名。
アルカイダの総司令官ウサマ・ビン・ラディンがまだ生きていたこの頃、スラヒを起訴し、有罪を立証して、死刑判決第1号にしようと目論んでいた。
しかし、カウチの元に運ばれてきた資料には杜撰な点が多く、ナンシーが開示を請求した政府書類も肝心の部分が真っ黒に塗り潰されている。
政府も米軍も何か重大な秘密を隠しているのではないか、疑念を抱いたカウチとナンシーは、それぞれ反対の立場から真相に迫っていく。
ここからスラヒが勾留中にどんな目に遭わされていたかが明らかになっていくのだが、現代のアメリカでこれほどむごい非人道的なことが行われていたのかと、正直、空恐ろしくなった。
アメリカ政府が9.11の容疑者として逮捕、勾留したのは799人に上り、起訴されたのはうち8人、しかもそのうち5人が控訴審で無罪になったという。
しかも、米政府も当時のオバマ政権も、いまだに自分たちの誤認逮捕や非人道的取調の事実を認めておらず、公式に謝罪もしていない。
こういう国に、今のロシアを批判する資格があるのか、などと言っても詮無いことではあるけれど、改めて国家による組織的冤罪事件の怖さを思い知らされました。
オススメ度A。
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